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Sakuma side.
控えめに玄関に入ると、落ち着いたウッド調でまとめられていて、古い洋館をリノベーションしているからいろんなタイプの部屋があると知った。
めっちゃ良い匂い‥カレー？
軽快なリズムに乗ってお風呂が湧いたことを知らせる音声が流れる。
『お風呂どうぞ。ちょうど沸いたみたいです』
一度室内に消えていた姫野さんがタオルを持って戻って来る。
「ぇえ？！さすがにそれは悪いよ！」
『んー、そんな濡れてたらずっと玄関にいなきゃいけなくなりますから。はい、これ、タオルと上がったら‥あ、これ新品です。』
新品の…部屋着？男物？そんなことある？！
しかもBreathという、俺達が今度コラボする下着ブランドのもので。そんなの家にあることある？
もしかして彼氏さんとかいるのでは？とか、思ったけど。
やばっ、寒気した。
あまりに寒かったので、そうだったらあとから謝ることにしよう。
「ありがとう、じゃあ有り難く借ります！」
もう、こうなったら潔く！ペコリと会釈をして、お風呂に向かう。
「やば‥めっちゃ女子のお風呂じゃん‥」
きれいに統一されたラベル。かわいい石鹸。あひるのおもちゃ。
そして、シャンプーが良い香りすぎる。
…え、待って。姫野さんもこの風呂入ってるよね？！
だめだー、人の善意を！俺は馬鹿か？！
自分の頭を一発叩いて、湯船に入らせてもらう。
「もー、やばい」
ザブンと肩まで湯に浸かると、一日の疲れがどっと溢れ出す。
極楽なんですけどー
ゲリラにあって、鍵なくして。
こんな楽園待ってると思わないじゃん。
しかも誰かに沸かしてもらうお風呂なんて、本当に久々で。幸せで。
何より、いつも思うひとりになると怖い、という気持ちを一瞬忘れられていることが、
本当にありがたかった。
お風呂からあがると、すでに洗濯機が回っていて。
借りる予定の部屋着の横にミネラルウォーターが置いてあって。
え、神様なの？！
何から何まで、俺の気持ちを潤してくれる。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
