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Sakuma side.
「佐久間、なんか今日コンディションいいね。」
迎えの車の中で、いつもとの違いに気づく阿部ちゃん。
「ぐっすり寝たから〜」
いや、待てよ。
「俺バレてないじゃん。」
名前名乗ったよね？割としっかり目もあった。
「何が？」
いきなり発した言葉にびっくりする阿部ちゃん。
「いや、でも。それは流石に。」
知っていて知らないフリするメリットが1ミリもなくない？
いや、自分がそんな誰からも知られてるとは思っていない。ちょっと恥ずかしい。でも、グループの中じゃあ目立つ見た目で、気づかれるなら自分が多いのかな、
なんて、恥ずかしいこと考えちゃってたんですけどー？！やばい！
「うっわ、やっべーわ、俺。」
「うん、今この状況がとんでもなくやばいよ。」
阿部ちゃんとも噛み合わずに、現場に入り、仕事はもちろんきっちり取り組んで、再び帰路につく。
緊急事態発生。
マネージャーさんにはコンビニ前で下ろしてもらい、買い物を済ませコンビニを出る。
ポツポツ‥ザー！！
「やっべ！」
あと1分ってところでドラマみたいな雨が降ってきた。
走って門を通過、なんとか家の玄関前まではついたけど。もう服っていうか、濡れた布だよね。身体にびっちょり貼り付いて、一体化してるわ。
そして、緊急事態はこれで終わらない。
「え、ない…」
鍵がない！
カバン、ポケット、ない！
「あー、まじでない、え…嘘？！
え〜どうしよ、俺の鍵〜、明日はせっかくのオフなのに！」
‥車の中だ。
前の家までのマンションはカードキーだった。久々に回すタイプの鍵で。スマホと一緒に座席に置いてたから‥
ガチャ
『あ、』
「え。」
102号室の扉が開き、姫野さんと目が合う。
『え？！めっちゃ濡れてるじゃないですか！』
「あ、あぁ、雨凄くて！」
いや、それどころじゃないから笑うしかない。
『凄くて！じゃなくて！鍵ないんですか？！』
「え、なんで知ってるの？！」
『いや、めっちゃ独り言でかいですよ。嫌じゃなかったら入ってください。』
「え、でも」
周りをキョロキョロ見る。これは癖になっている。
『風邪ひいちゃいます。彼女さんとかいるなら後からわたしがちゃんと説明しますから。』
彼女とかその心配はないんだけど…まあ、でも本当に善意な気がするし…
「あ、うん…じゃあ、お言葉に甘えて…お邪魔します」
『はい、どうぞ。』
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
