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Sakuma side.
ガチャン、と一切振り向きもせずに扉が閉まるのを見届ける。
今日は上から下まで黒尽くめの俺。いつものピンク頭は帽子の中に閉まってある。メガネもしている。
え？
胸に手を当ててみる。
すごいドキドキしてる。
それは、バレそうなヒヤッとしたドキドキでもなくて。
え？！嘘？！
もちろん収録とかできれいな女優さんにも会うし、アイドルにも会ったりする。
みんなで可愛いねー、なんて話たりすることもあった。
自慢じゃないけど、もちろん連絡先を聞かれたことだってある。
でも、自分の中でどれも他人事というか。
ほんとに好きな人とかどうやって出会うのかわからない。
だから、少なくとも10年。
こんな気持ちからはご無沙汰で。
見上げた空がまた、やけにキレイで勝手に後押しされている気分になる。
「寒っ。中入ろ。」
残りの荷物を持って部屋に入る。
まだダンボールだらけの殺風景な部屋。
急いでシャワーを浴びる。
「ふぅ‥」
部屋に戻ってベッドに座る。冷静になるとやっぱり少しだけまだ恐怖を感じて手が震えてしまう。
一人になるのが怖い。
「姫野Aさん。」
明るいことを考えよう。そう自分に言い聞かせて、さっきの姿を思い出してみる。
外灯の暗めの光でもこちらからははっきり見えていて。
黒髪は少しウェーブしていたけど、パーマじゃなさそう。センターに分けられている前髪から覗く、結構はっきりした目鼻立ち。
めちゃくちゃ美人！というより、愛嬌のある可愛い顔。
「ふぁあぁ‥」
顔とかっていうより、表情。
ホント可愛かったな…
姫野さんのことを考えていたら、なんだかちゃんと眠くなってくる。こんなの久しぶり。
そう思って目を閉じた。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
