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「A〜このグラスで飲んだらうまーいっ！ね？うまいでしょー？」
飲み始めて小一時間。
『ちょ、さっくん、もうやめたほうが…』
気づけば呼び捨てになっている名前。
ほっぺが髪の毛みたいなピンクに染まったさっくんは完全に酔っ払いだ。
「なんで〜らめっていうんだーっ、」
ポカポカと二の腕あたりをパンチしてくる。まだ3杯目…？
もしかして、お酒弱いの…！？
『ねぇ、めっちゃ酔っ払ってます？』
「いーのっ。誰と飲んだって自分の好きなだけ酔えないのっ。」
あぁ。そうか。特に外だと色々制約がかかったりするんだろうな。
『…じゃあ。今日だけ。』
「Aやさしーからすき。」
『…はいはい。』
トロンとした顔でデロンデロンな笑顔。
こんなアイドルいないよねってくらいの表情。
そんな顔で好きとか言われたらファンじゃなくてもドキッとするから困る。
『でもそろそろ、水。持ってきますね、』
「A。
…いかないで。」
立ち上がろうとした手を掴んで自分の方に寄せる。
『えっ、わ、』
バランスを崩してさっくんにもたれかかるように崩れ落ちる。
さっくんのあぐらの中に身体が入って、なんとか手で止める。
「‥おねがい。もっととなりにいて。」
『さ、さっくん…？』
上から聞こえる小さい声は
なんだか自信がないような、
陽気な雰囲気ではなかった。
「…すー…」
『へ‥』
寝た？
顔を上げると、ソファにもたれかかり、寝息を立てている。
‥えぇ、
‥どうしよ。
起こして部屋に帰ってもらっても、万が一誰かに見られたらまずいし。
時計を見ると23時。
うーん。
『…さっくん…ベッドまで歩くよ…』
「んん…」
仕方なく、ベッドに寝かせることに決める。
わたしの何倍も疲れているだろうし、ストレスもヤバそうだし。一日くらいソファで寝たってわたしは大丈夫だ。
『よっこいしょ‥』
「‥」
無事にベッドの中に入ったさっくんは
お人形さんみたいなキレイな寝顔をしていて。
思わず、じっと眺めてしまった。
『ゆっくり休んでね。おやすみ。』
そう言って、寝室のドアを半分だけ閉める。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
