13 Abe side. ページ13
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Abe side.
「阿部ちゃん阿部ちゃんっ」
「何、佐久間」
音楽番組のリハーサルを行っているテレビ局で、ヘアメイクも終わりみんな各々寛いでいると佐久間がニコニコで近づいてくる。
「俺引っ越しする！」
「え？！どこに？！」
いつもだけど、あまりに急な話にびっくりする。
というのも、前に引っ越ししてから一年経ってないような記憶があった。
「雪坂町に良い物件があって」
「雪坂？！ま、まあ遠くはないか。いつ？正月休みに？」
俺たちは9人組のアイドルとして活動していて、やっとデビューしてからは結構忙しくさせてもらっている。
そんな中で雪坂町、なんてワードが出てくることにびっくりしていた。大体、芸能人と名乗るような人が住む、という感じの町でもない都心からは15分くらいだけど、なんというか…平和な町。簡単に言えばなんもない町だ。
「いや、それが〜今日の夜中なんだけどねー」
「え？！」
今日って…
楽屋にあるカレンダーを一度見て、もう一度佐久間を見る。
「今日12月30日だけど…」
ていうか、31日も朝からリハをして、途中生放送にも出演しつつ、年越しではカウントダウンのイベントがある。
なんなら1年で一番忙しい日と言っても過言ではない。
「そう！だからさ、業者がなかなか見つからなくて大変だったの！」
「じゃなくて！
…なんかあったの？」
一瞬、佐久間の顔が強張ったのがわかった。
「あー、大したことではないけど。
なんかさ、家バレてて？めっちゃうろついててさ。ポストにもなんか入ってて。」
「ぇえ！また？」
そう、佐久間に対する嫌がらせのようなことはこれが初めてではなかった。
「まーだからさ、バレないような場所？発見したから。みんな心配するから内緒ね。」
他の7人のメンバーには心配をかけたくないらしい。
「で、でも雪坂町ってそんなマンションないよね？」
やはりセキュリティ面で言えばマンションになる。
「まあ、木を隠すなら森の中！みたいな言葉あるじゃんっ」
「え、佐久間、木なの…？」
「とりあえず落ち着いたら来てよ」
「う、うん」
色々引っかかることはあるけど、人気商売。なかなか強気に出ることが難しい場面がある。
今度こそ佐久間に平穏が訪れたら、それで良い。
「準備お願いします！」
スタッフさんの声に、ぞろぞろとスタンバイに向かう。
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作者名：rinao | 作成日時：2024年1月19日 5時
