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ラウンド6 ページ7

「そうだね…このままここで殺すのも良いけれど、気絶しているだけなら皆の前で葬ってしまった方が良い。何せ人の姿でいられる最後の時だからね。全員に覚悟を決めさせてから、刀剣男士としての役目を終えよう」

「分かりました。皆さんを大広間にお呼びしますね」


前田の言葉と共に、四人は廊下を駆けて行った。
残された一期とA。
一期は倒れたままのAをマジマジと見る。
新しい審神者の顔を見るのは初めてだ。
その顔を眺めていて一期はふと思った。

ごく普通の少女ではないか。

普通に布団に転がるのと同じように、その少女は目を優しく閉じて、微かに呼吸の音を立てながらそこに倒れている。


「…」


不思議な気持ちだった。
自分達は今からこの少女を殺さなければならない。果たしてそれは許される行為なのだろうか。
まだ若く、これからの人生にも希望を抱いているであろう少女の命を、捨てられたも同然である自分達が奪っても良いのだろうか。


「…」


しばらく忘れていた感情が、少しずつ蘇ってくる様だった。
しかしその感情さえ、もう持つことは許されない。自分達はこの少女を殺すことによって、最後の最後に存在価値を認められる。


「…存在価値、か」


誰にも聞こえないくらいの声で、呟いた。

いや、駄目だ。余計なことを考えるな。
これから殺す者に、無駄な情けを掛ける筋合いは無い。
彼女だって自分達と同じ、世間から捨てられた存在なのだから。

頭を横に振って気持ちを落ち着けると、一期はそっとAの腰元と床の間に手を入れて身体を持ち上げた。
あたたかくて、やわらかくて、おもみのある人間の身体。


「ん…」


突然Aが一期の腕の中で唸った。
驚いてうっかりAを落としそうになってしまう一期だったが、何とか踏ん張って耐える。
恐る恐る一期はAの顔を覗き込んだ。
幸い、目覚めてはいないようだった。

そのまま大広間の襖の前まで行き、誰か開けて頂けませんか、と言うと、近くに居たらしい山姥切が襖を開けてくれた。


「ありがとうございます」


一期は微笑んで礼を言うが、山姥切は布を更に深く被って黙ったまま目を逸らした。
大広間には、もうほとんどの刀剣男士が集まっていた。



〜追記〜

次はわりかしエグい表現ありますご注意を( ˇωˇ )

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設定タグ:刀剣乱舞 , とうらぶ , 女審神者   
作品ジャンル:アニメ
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そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そると | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月6日 18時

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