ラウンド5 ページ6
一ヶ月後。
久々に戻って来た人の肉体に懐かしさを感じながら、何気無く右手を開いて、また閉じる。
自分達は、新しい審神者を殺す道を選んだ。
その審神者の霊力のお陰でまた顕現出来たが、この肉体もいつまで持っていられるか分からない。
何せこれから自分達は霊力の発生源である審神者を存在ごと消すのだ。
人は想像以上に脆い生き物である。躊躇さえしなければ三日と経たないうちに…いや、今日中に殺せるだろう。
「お前達、準備は出来たかな」
「うん」
「バッチリだぜ」
乱、厚、後藤、前田。
この四人が握っているのは太いロープ。そのロープは天井のフックに掛けられ、先端には金ダライが繋がっていた。
「山伏さん達にも手伝って頂けたので、予定より石の量を増やしましたが構いませんか?」
「ああ。構わない。あちらに察される前に手早く、血を流さず、そして確実に送って差し上げよう」
前田にそう答えた一期は、襖の陰から廊下の様子を伺った。
遠くの方から、徐々に狐と審神者の声が近付いてくる。
「…来たみたいだね。お前達、上手くやるんだよ」
「おう、任せとけ」
一期は部屋の奥に身を隠し、弟達の様子を見守った。
審神者達の声がすぐそこまで近付いて来た時、四人は見計らったように部屋から少し顔を出した。
その表情は輝いており、期待に満ちている。
勿論、この表情は演技だ。
今時こんなタライに引っかかる人なんているわけがないだろう。
新しい審神者は「可愛らしいもの」に弱いと聞いた。
だからと言うとまた弟贔屓だなんて言われてしまうのだろうが、あどけなさが残る少年の身で誘惑すれば、わざと引っかかってくれるのではないかと考えたのだ。
背後や物陰から襲い掛かるという案もあったのだが、気配を察知されてしまったらお終いだ。だから、姿を見られてもただの悪戯だと認識できるタライ落としを選んだのである。
一期「行け!」
一期が小声で指示を出すと、弟達は同時にロープを持つ手を離した。
ゴッ、と鈍い音がして、タライが床に落ちる金属音が響く。
慌てて廊下に出るとそこにはうつ伏せで倒れている審神者がいた。
「やったか?」
「いや、身体が刀に戻らない…死んじゃいないな」
失敗か。
ふう、と溜息を吐く五人。
「で?どうする?このまま喉笛搔っ切るか?」
後藤が短刀を鞘から抜きながら言うと、一期は腕組みをして低く唸った。
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そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月6日 18時