ラウンド13☆加州視点☆ ページ14
これで、良いんだ。
人を騙すなら、身内から騙さなければならない。
殺気を放っていることを他の刀剣男士に気付かれてしまえば、きっと主にも伝わってしまうだろう。
そう思って皆の前では審神者に対して優しく振る舞っていた。
先程、審神者を誰が殺すかという話になった時。
名乗り出る者は一人も居ないと思っていた。
誰も殺しそうにないからやっぱり俺がやるよ、なんて言う予定だった。
しかし、一期が手を挙げた。
そこから予定は狂い始めた。
一度拒否した身として「やっぱり俺がやる」なんて言える筈もなく、一期が刀を構える様子を、自分は歯を食いしばりながら見ていた。
でも、一期は審神者を殺せなかった。
あの部屋で見た光景は果たして現実だったのだろうか。それとも自分達の頭がおかしくなってしまったのだろうか。今でも自分の目が信じられないでいる。
もし現実だったのだとしたら、あの審神者は多分、人間ではない何かだ。
傷口の再生にもぞっとしたが、『殺せない』という事実が何よりも恐ろしかった。
やっと目の前に見えていたゴールが、一瞬で消え去った時の絶望。
どうして。
どうして。
どうして。
殺したい。
殺したい。
殺したい。
そんな思いばかりが頭の中をぐるぐると回っていた。
でも、俺は諦めたくない。
この世で一番憎い審神者という者を殺すまで、刀剣男士としての生を終わらせる訳にはいかない。
廊下を踏んでいた加州の足が止まった。
しばらく迷ったようにふらついた足は、方向を変えてAの部屋の方に動いて行った。
加州は歩きながら携えていた刀身を抜く。
Aの部屋の前で立ち止まり、初夏の光を反射する白刃を見つめて深く息を吐く。
「…あーるじっ」
布が擦れる音の後、審神者は慌てたような声を出して近付いて来る。
「は…はいはい!何、どうしたの…」
襖がゆっくりと開かれる。
「加州?…え、何それ、ちょっと!」
「ごめんね、主。ばいばい」
愕然とした表情のAの肩に、加州は刀身を押し付けた。
足で襖を蹴り倒して、目の前の少女の右肩から左腰までを一気に斬り裂く。
床を掠った刀剣を振るうと、柱に血がぴしゃりと弾けた。
再生能力など使わせない。その前に完全に息の根を止めるだけだ。
加州は傾いたAの体を捉え、心臓の辺りを一突きした。
遠くの方から足音と誰かが叫ぶ声が聞こえた気がした。
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そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月6日 18時