ラウンド9 ページ10
静寂に包まれる大広間。
すると、フリルのついた軍服風ワンピースを来ている子が取り繕う様に言った。
「あ、あ〜!ちょっと驚かすつもりでタライ落とししたら、当たりどころが悪かったみたいで、主気絶させちゃったんだ…ごめんなさい…」
その声は段々弱々しくなり、語尾は震えている。
Aも慌てて、大丈夫大丈夫と繰り返し言った。
こんな可愛い子を泣かせる訳にはいかない。
ところで、何か大切なことを忘れている気がする。
金ダライが頭に当たって、気絶した。
金ダライって、そんなに破壊力あったっけ?
私そこまでヤワな人間じゃないはずなんだけど…
「…あ」
思い出した。
「ちょっと待って!あのタライ、漬物石めっちゃ入ってたよね!?見たよ倒れる時に!?」
そうだ。あのタライの中には漬物石が詰め込まれていたんだ。
自分が倒れる寸前にタライから零れ落ちた石は大きく、冗談で頭に落として良いものではない。当たりどころが悪かったら死んでしまうだろう。
「あ…どうしよ、バレた…?」
「バレたって何!?え、皆私のこと嫌いなの!?私初めましてだよね!?初めましてで殺されかけてるよね!?」
Aは必死に叫んで、赤い目の青年に摑みかかる。
「え!俺!?ちょっと、落ち着いて…」
「落ち着ける訳なくない!?ねえ!?」
一応自分は、この刀剣達の『主』なのだ。
そいつらに殺される?そんなのおかしいだろう、たまったもんじゃない。
すると、今度は青い瞳でダンダラ羽織を着た、ポニーテールの青年が叫んだ。
「…まだ分かんないのかな!僕達、主のことすっごい嫌いなんだよね!」
ギャラリーから短く『えっ』と驚きの声が聞こえた。
が、しかしその直後に全員は口を揃えてAに向かって罵倒し始める。
「そうだそうだ!何で気付かねえんだよ、ここまでされたら普通分かんだろうが!」
「俺たちは審神者に散々虐められてきてるんだよ!人が変わったからどうこうって問題じゃない!」
この発言にAはショックを受けた。
そうだ。どうして気付いてやれなかったんだ。
刀剣男士達の心の傷については全てこんのすけが教えてくれたのに、どうして無視してしまったんだろう。
自分が主だから殺されるのはおかしい?
主らしいことの一つもまだしていないのに、そんな理屈こそおかしいではないか。
「…ご…ごめん…そうだよね…」
Aは勢い良く立ち上がり、その場から一目散に逃げ出した。
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そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月6日 18時