第六話 遺愛 ページ7
__凄まじい攻防。
五条先生はいとも簡単に宿儺の相手をしているが、宿儺のレベルは間違いなく特級相当だ。僕や恵くんじゃ秒殺。
「七、八、九…………そろそろかな」
その言葉を合図に、パーカー少年の肌の模様が薄れていく。
先程まで、濃く刻まれていたそれが__あっさりと。
『……嘘でしょ』
「おっ、大丈夫だった?」
「驚いた。本当に制御できてるよ。」
「でもちょっとうるせーんだよな……アイツの声がする」
「それで済んでるのが奇跡だよ」
トン、と、少年の額に指を当てた先生。
そうすれば、意識を手放した少年が崩れ落ちた。
「何したんですか」
「気絶。……これで目覚めた時 宿儺に体を奪われていなかったら、彼には器の可能性がある」
『……』
「さて、ここでクエスチョン。彼をどうするべきかな。」
視線は恵くんの方へ。
僕も同じく彼へ視線をやった。
「……仮に器だとしても、呪術規定に則れば虎杖は処刑対象です」
「でも、死なせたくありません」
「……私情?」
「私情です。なんとかしてください」
潔い恵くんの言葉に、五条先生は笑い声を上げた。
そして。
「……かわいい生徒の頼みだ。任せなさい!」
パーカー少年__虎杖の処遇は粗方決まっただろうか。少なくとも、僕が口を挟める様子は無かった。
「後処理は補助に頼んだから、二人は伊地知が来たら車に乗せてもらって。僕はこの子を持ってくから。」
よいしょ、と呟いて軽々と虎杖を担いだ五条先生。
そして、黒い布に覆われた瞳がこちらを向く。
「あと、朽はさっさと戻しときな。」
『あぁ……忘れてた。』
朽は、破壊された壁の辺りで見物に徹していた。
僕と目が合えば、機嫌良さげに軽く手を振ってくる。
中指を立てておいた。
「色々思うところもあるだろうけど。この子ともすぐ仲良くなれるよ」
『そういうの気にして殺そうとしてたんじゃねぇわ』
「あはは。だよね〜。……まぁ、蟠りは本人と話して何とかしたらいいや。__選んだのは君なんだから」
その表情は伺えないが、何となく、その瞳が僕の全てを見透かしているみたいにこちらを捉えていることは、居心地の悪さと共に覚った。
「それじゃあお疲れ様。恵のこと頼むね
___
『……了解。』
僕は知っている。
呪いは呪いであって、其れは 人を救うためのものにはなり得ないこと。
僕は悟っている。
彼の行く末が、言わずと知れた暗闇だということ。
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時