第三十七話 霧中 ページ40
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「アンタの弟、思ってた以上に生意気だったわね。あんまり雰囲気似てないし」
「それで言うと真依もね。真希とはあまり似てないだろ」
「……で、どうすんのよ。アンタ今回の交流戦、人殺しの任ばっかり受けてるんじゃない？」
「あぁ、確かに。でも大丈夫だ、ちゃんと後ろ盾はあるからね」
学長の命令と、花厳家現当主の命令。
前者はチーム全員で行う宿儺の器の始末、後者は俺一人に任されている……呪質体＿＿愛の始末だ。
俺が愛を殺すことにおいては、何の罪にも問われないだろう。
愛は呪術界の中でも、大半からは呪術師として認められていない。
花厳家内の問題は禪院家も加茂家も面倒で手は出さないし、愛が現時点 高専で呪術師を名乗っていられている五条の力も、あくまでも呪術師としていられるというだけの保証でしかない。
俺が愛を殺したって術師殺しのレッテルが貼られることは無いし＿＿きっと人殺しとも見なされないだろうな。
「(……反対に)」
アイツが俺を歯向かうならば、今以上に多くの敵を回すことになる。
五条の手ですら守りきれない数の、敵が。
「……」
今まで、一度たりとも揺らがなかった。
それが少し、恐ろしくもある。
己の手で痛めつけられるアイツを見て、全てが変わってしまったのだと悟った。
俺だけじゃない、アイツも、そして、この関係も。
ただの挑発でしか無かったのだろうが、今朝かけられた言葉が脳裏を渦巻いていた。
本家の言いなり。分かっている。自分から望んで、その道を選んだのだ。
「(………あ、れ……)」
その目的が。
身を売り、術師となったその目的が、いつの間にか自身で認識できないものへとすり変わっていたことに心づく。
“良。お母さんのために、家族のために、少しだけ頑張ってね。”
“愛はいい子で、頑張ってくれるはずだから＿＿”
「誰だよ、……家族って」
もう、いないだろ。
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＿＿＿＿姉妹校交流会 団体戦の部
試合開始＿＿＿＿＿＿＿＿
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▶次章へ続く
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作者名：リナ | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2021年2月20日 21時
