独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ39)

今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:27,756 hit

第三十六話　退陣ページ39

「おー、まぁな。でも結果的に、何とか生き返れたし、死んだんが伏黒とか釘崎じゃなくて良かったよ」

『………あっそ』

口を尖らせてそう返せば、不思議そうにこちらを見た。
別に何でも言い合える仲でもないだろうに、それでも目を逸らす気はないようで。

『僕も同じ考えだよ。……死んだのが君で良かったってことも、それから、君と同じ状況に陥ったとして、僕も同じように自分が死ぬかもしれない選択をするだろうことも』

「……それは、なんか違くね？」

『多少はね。でも、君と僕が言ってることは根本的には同じなんだよ。理に適ってて、無駄がなくて、利口な判断』

「もー、悪かったよ。けど俺だって好きで自己犠牲してるわけじゃねぇしさ。」

やっぱり、お前との会話ってちょっと難しいな。そう言った表情は、言葉とは裏腹なものがあった。
それから、言葉を続ける。

「つーか。何で愛も自己犠牲優先すんの？」

『だから言ってるじゃん、お前と同じって。死んでもどうってことないからだよ』

「んな事ねぇよ。みんな悲しむ」

『………どうかな』

「愛、何かあったん？」

心配そうな薄茶の瞳。

そうだね、君が死んだ日、己に沢山のものが突きつけられた。

呪いを背負って生きること、助けた命に感謝されること、同級生が手の届かない場所で死んだこと。
僕にとってはそのどれもが、自分の無力さから来るものだと感じたんだ。

あの時も、今も。

『分かんないんだよ、もう』

「……」

『良の話、誰かから聞いた？』

「あー、釘崎からちょこっと」

なら、野薔薇に話した分の情報はこいつも知ってるか。
野薔薇もだけど、コイツにはそれ以上に、余計なことを話しそうになる。

『とりあえずまぁ、団体戦が終わる頃にはどっちかは死んでるだろうし』

「エッ？何の話？」

『兄弟喧嘩の話。アイツ完全に僕のこと本気で殺す気だし、僕は……、うん』

「いやでも……死ぬとか殺すとか、なんか過激すぎん？もうちょっとあるだろ？心配になってきたんだけど」

『大丈夫。言ったでしょ、死んでもどうってことないって』

「だからー！」

準備を終えて森の方へ向かおうとするものの、納得のいかない様子の虎杖がガッシリ肩を掴んだ。
だからコイツ、握力がゴリラなんだってば。

『絶対死なないから。
でも、殺されなかったら……僕が殺すしかないってだけ』

「？？」

『殺しちゃったら、もう道はひとつしかない』

「……愛？」

『たぶん、高専もやめなきゃね』