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第三十三話 繫縛 ページ36

『良の口ぶりから察したでしょ。……僕が呪術師になることを、花厳家の人間は認めてない』

「なんでよ」

『僕は呪術の類から遠ざけて育てられたから。……“そういう子”だから』


口を噤み、目を伏せる。
茶色の瞳がこちらに向いたまま、何かを問い質す様子はなかった。


『そんな僕が呪術師をやってる理由は、不純も不純、復讐のためってわけ』

「……」


真ん丸な目。
そりゃそうか。普通に生きてて、誰かに復讐しようだなんてそう考えることじゃないし。


『ヤバい奴でしょ。まだ知りたいの』

「……ヤバくはないわよ別に」

『ほんと〜?強がんなくていいのに』

「本当よ。アンタがシンプルに人を痛め付けることが大好きな狂人じゃないことは、廃ビルでの子供への対応を見たら一目瞭然だもの」

『……』


………見えるとこでやるんじゃなかった。
人に褒めてもらうために善行を成したことはない。
他人の目なんか気にしなかったからこそ、いざ人に見せたくないとなったら意識できないのだ。


『復讐、ね。……僕の本心が本当にそれを求めてるのかは分からない』

「……」

『でも、もう戻れない。呪いはそう簡単ではないから』


話しすぎたところで、気を使わせてしまうだけだ。
上手く濁しておくのが最善だと思う。


『結構話したんじゃない?もう良いでしょ?』

「なんか、どれも微妙にはぐらかされた感があるわね」

『じゃ、生きてたらもっと話してあげる。お互い、死に際に“知れなかったこと”の後悔をしないように長生きしなきゃね』

「そういや、長生きしろよって言われたんだったわ」

『じゃあ尚更。休憩終わり!』


ペットボトルを置いて立ち上がれば、同様に野薔薇も立ち上がった。


『ちゃんと自分の口で話すから。少しだけ待っていて』


ふわり。
ぎこちないだろうか、頬を緩ませ笑む。
いつもの取り繕いとは異なるそれに、野薔薇が硬直した。





「……まぁそうよね、兄弟なんだし」

『何が?』

「強いて言うなら、顔ね」

『ごめん分かんないんだけど』


理解が及んでいない僕を置いてきぼりにして、野薔薇はパンダ先輩の訓練へと向かった。
……納得いかない。


深くため息をついて、解けていた靴紐を結び直す。


『兄弟喧嘩、やるからには勝つよ。……そんで返り討ちにしてやるもんね』


そんな決意を胸に、僕もまた棘くんの訓練へと向かっていったのだった。












___そして、翌日。





交流会当日がやってきた。

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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2021年2月20日 21時

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