第三十二話 閑話 ページ35
「……京都校のアイツらが来た時の、茶髪イケメンとの会話よ」
『……………………良のこと?』
「たぶんそれね。イケメンって言っても顔だけよ?私の好みではないわ」
『あー、そう……』
野薔薇の理想像、めちゃくちゃハードル高そうだもんなぁ。
確かに良は、本家から色んな女性との縁談の話が出ていると聞いたことがあった気がする。仔細は知らないけど。
「アンタに対するアイツの態度はどうかと思ったわ。……けどその前に、アンタは話さなさすぎ」
『……』
「どんな話を聞いても、私がアンタを人外だと笑うことはないって断言できる。それでも、何も知らない状態じゃアイツらの言葉を否定することもしてやれないじゃない」
気味悪がられることが、怖いわけじゃない。
そんなことに恐れる自分は、もういない。
だけど。
『……呪術師は、いつ死んでもおかしくない。それはもう、痛感したでしょ』
「……えぇ」
『それなら深入りする必要なんて無いんじゃない?いつ来るかも分からない別れに怯えるくらいなら、馴れ合いすぎない距離感が良いんだよ』
「………それはつまり、傷つけたくないってこと?」
言葉に、詰まる。
考えもしなかった返答に、思考が追いつかなかった。
傷つけたくない?
僕が、他人を?
……何度も反芻した。
僕は、何のために生きているのか。
僕が生きる理由__否、生きていられる理由を考えれば、それは、有り得ない事実のはずなんだ。
「私はね、そうじゃないのよ。」
『え?』
「虎杖が、死んだって聞いた時。ちょっとだけ後悔した。会って間もないのにどうしてって思ったけど、そうじゃなかったのね」
『……どうして?』
「会ったばかりだったからよ。よく知らなかったから。これから知れるかもしれなかったから。だから、その“これから”が潰えた事が悔しかったのよ」
凛々しい表情がこちらを向いた。
野薔薇と僕の性格は、少し似ていると思っていたけれど。
彼女は僕よりも真っ直ぐ芯の通った心を持っている。
僕では、足元にも及ばないだろう。
「つーわけで。話せる範囲で話しなさいよ。私はもう虎杖の時みたいな後悔はしたくないの」
『………それ引き合いに出すの狡いでしょ』
「だから話せる範囲でって言ってんじゃない」
ズカズカと踏み込む訳では無いところが、余計にむず痒い。
『……僕が、呪術師をやっている理由』
「前聞いた時は、成り行きって言ってたけど……そうでもなさそうよね?」
『……うん』
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時