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第二十八話 確執 ページ31

「あぁ、ごめんなさい。でもまだ、人外は残ってたわね」

「……あ?」

「ほら、そこの___」


『っ、』

「呪いの受け皿、花厳家の生贄が……ね?」


真希さんの妹は、僕に対しても同じような言葉を向け__、そして、パスを与えるみたいに、彼女の隣にいる男に視線を移した。

「あぁ……そうか。それなら申し訳ないことをした。伏黒くんと、そこの君も一年生か」

「……伏黒、愛、コイツら………」

「其奴に話しかけるな。人じゃない」


嫌悪感丸出しに、京都校の三人を睨みつける野薔薇。
僕の名前を呼ぶ声に被せるようにして、良は睨んだ。

僕は、為す術なく唇を噛む。


「東堂。これの相手は俺がして構わないな」

「さっさとしろ」


コツ、コツ、と、一歩ずつこちらへ近づいてくる兄を睨みつける。
恐怖か、憎悪か、分かり得ない感情。
無意識に近くにあった服の裾を掴む。たぶん恵くんの。すまん。

事情を知らない野薔薇は、不思議そうに、だけど不服そうにこの状況を見ていた。


目の前に立ち止まり、一方的な言葉を投げかけられる。



「……なんで、のうのうと呪術師なんかやってんだよ」

心底憎そうな言葉。
僕だって、………、__


「お前のせいで、何人が死んだと思ってる?誰が死んだと、思ってる?」

『……知る、か、そんなの』


絞り出した声は、自分でも初めて聞くくらいに震えていた。
今にも泣き出しそうな、小さな子供のようだった。


「母さんを殺したのはお前だッ!!家族が死んだのは、お前のせいだ!!」


『っ、当然だろ、あんな奴ら……!!僕は何にも間違ってない、自分のことしか考えてないナルシストが死んで何の損害があるんだよ!!』


強がる言葉を叫び散らして。
でも、脳裏に溢れ出るのは“ごめんなさい”の六文字だけ。
相も変わらず一致しない思考と行動に嫌気が差して、止まない罵倒の言葉に先程よりも強く、血が滲むほどに唇を噛んだ。


『じゃあ……!!あの時死ねば良かったのか!?耐えきれない痛みを背負って、自分に向けられた訳でもない呪いの生贄になって、苦しんで苦しんで意味もなく死ねば良かったのか!?』

『何十人の無意味な命が救えるのなら、僕一人が犠牲になればいいって……!!そういうことなのかよ!!』





虚しい。
誰も、助けて、くれない。

独りぼっちの言葉が、虚ろに響く。



「……そう言ってる」



冷たい言葉が、頭上から降る。



この男は、もう。





僕の兄なんかじゃ、無くなっていたのか。

第二十九話 追憶→←第二十七話 嘲罵



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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2021年2月20日 21時

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