独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ29)

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第二十六話　隔意ページ29

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『花厳家(うち)の関係でしょ。棘くんが僕に構うの。……愛(ぼく)っていうか、良の弟に構ってるだけ』

あしらう様に、冷たい言葉を投げかけた。
そんな態度は今更で、棘くんだって、一切気にする様子もない。

「おかか。いくら」

『だからぁ！！今は繁忙期とかで余裕無いだけで、ちょっと経てば……って、見世物じゃないんですけどぉ！』

「棘泣かせんなよ愛～」

「す～じこ～」

『傷心の“し”の字も無いじゃん！！僕が責められてんのおかしくない！？』

事情を知っているから。
だから、そうやって振舞ってくれる。
全部優しさ。気遣い。
そんなこと、分かってる。明瞭なことだ。

『ごめんね、変なこと言った。良と顔見知りってだけで、“そっち側”についてるみたいな、そんな感じに思っちゃっただけだよ』

「……しゃけ」

『色々ありすぎて、元気では無いけど。……元気だよ』

＿＿＿＿他人にも自分にも気づけない傷は、誰が気がつくものなのだろう。

僕にとってそれは傷と呼べる代物ではなくて……もっと無価値で、無意味に等しい何かでしかない。

そんなものを気にかける必要はない。
蓋をして、傷になった時なんとかすればいい。

『(そうやって、僕が生きてくことを……朽は望んでるんだろ)』

“正しくない”生き方をして。
元に戻せないくらいにぐちゃぐちゃに壊れて、死んでいく。

そんな生き方しか出来ないくらいに道が閉ざされていたから、そんな僕だから、アイツは僕と契約を結んだ。

「おかか。」

『交流会、やるからには勝とうね』

僕は死ぬ。
誰よりも早く、惨めな死に方をする。
今の命は、運良く延長されたものだから。

確定した未来に恐怖は無い。
暗澹の行く末は、何時だって、孤独だ。

「……おかか」

『さっきからおかかばっか』

「明太子」

『どうせ、さ。アイツと会うなら今のままじゃいられないでしょ。きっと、“何か”は変わるよ』

僕のこの、傷とも呼べない細事が大きく深く傷と成り果てるか。

或いは＿＿

もっと、どうにも出来ないくらいの、

『……あの日の事件の延長戦、……とかね』

小さな呟きが彼の耳に届いたかは分からない。
ただ、彼は何も言わなかった。

僕の方すら見ずに＿＿わしゃわしゃと頭を撫でてくるだけ。

『あんまり僕に構わないでね。きっと寂しくなっちゃうよ』

「おかか。」

グラウンドに向かう道すがら。
蝉の鳴き声がより一層大きく聞こえて、迚、切なかった。