第二十五話 過分 ページ28
「なんだ、いつにも増して辛気臭いな?」
「お通夜かよ」
気まずい沈黙を破った彼女は、袋状の武器入れを肩にかけて仁王立ちしていた。
「禪院先輩」
「私を苗字で呼ぶんじゃ__」
「真希!真希!!」
「まじで死んでるんですよ、昨日!一年坊が一人!」
「おかか!」
「は、や、く、言、え、や、!!」
どうやら、二年生全員が揃っているらしい。
そろそろ繁忙期も抜けてきたし、暇なのは分かるけど。授業受けなくていいのだろうか、この人達。
一年を前に騒ぐ先輩たちを目にし、野薔薇が恵くんに説明を促す。
恵くんによる二年生の紹介を終え、場が落ち着いたところで、パンダくんが要件を話し始めた。
「いやー、スマンな、喪中に。
……だがオマエ達に、“京都姉妹校交流会”に出てほしくてな」
「京都姉妹校交流会ぃ?」
「京都にあるもう一校の高専との交流会だ」
『でもそれ、二・三年メインのイベントじゃなかったっけ?』
僕の質問に深く頷いた真希さんは、呆れ気味に返答した。
「その三年のボンクラが停学中なんだ。人数が足んねぇ、だからオマエら出ろ」
そういや、三年の先輩には会ったことなかったな。
以前言っていた通り呪術師なんて僅少だし、三年生はそもそも居ないのかと思っていたくらいだった。
高専の行事に関してあまり詳しくない野薔薇に、先輩たちが事細かに説明をする。
その間に、僕はどうしたものかと考え込んだ。
京都校……となれば、言わずもがな“アイツ”もいるわけだ。
色々と落ち着いたものの、事件以降、アイツとは一度も顔を合わせていない。
……ろくな会話も出来ない予感を犇犇と感じる。
「で、やるだろ?」
「仲間が死んだんだもんな」
とは、いえ。
今逃げたところで、いつかは顔を合わせるのだと考えれば、これを断るのは些か言い訳がすぎる。
「「『やる。』」」
そんな僕の長い思考とは裏腹に、真っ直ぐな意図のもと返事をした二人。
偶然にも三つの声は重なったが、何となく、後ろめたい感情が僕の胸の内でざわついた。
◑
「……高菜」
話を終え、早速交流会に向けて練習をしようという流れになったところで。
偶然なのか勘が鋭いのか、見透かしたように棘くんに声をかけられた。
『別に。………何もねーってば』
「おかか」
『色々と考えてるだけだよ。どうすればいいのか、分かんないだけ』
だけ、だなんて 軽い言葉で済ませられるものでないことは、僕も棘くんも、気づいている。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時