第二十三話 卒爾 ページ26
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「愛くん!大丈夫だったっスか!?」
『えー……あー……大丈夫……だったかなー……』
「怪我酷いっスね!?一旦応急処置するっス!!」
呪霊を全て倒しきったところで、校舎を覆っていた帳は無事に上がった。
倒しきる、ことはできた。
……けど本当に危なかった。
呪力は枯渇し、何より色んなところに穴が開いた。
今は若干の貧血状態。
あともう少し数が多ければ、僕の方が駄目になっていたと思う。
「帳を降ろしてから……というか降ろすタイミングで。異変を感じたので上に確認を取ったところ、今回の任務は一級相当、それも二人から三人程度が派遣されるはずのものだったっス……」
『だろうね……、一級レベルを数体確認した』
「本っ当に申し訳ないっス!私が持っていた情報とどうやらズレがあったみたいで……!」
『それも分かってる。てか、それに気づいたところでどうにも出来なかったと思うよ。新田ちゃんのせいじゃないから安心して』
そう言い添えれば、心苦しそうな表情のまま、処置を終える新田ちゃん。
車の準備をしてくるから、少しの間休んでいて欲しいといった旨を告げてから、車の方へと向かって行った。
校内での混乱は、不審者の侵入とのことで話を纏めたらしい。
被害者は、僕が来る前に呪霊にやられた四名、朽に殺された七名で計十一名。
事件の処理等は補助の人がやってくれるから、ある程度の隠蔽はなされると思うが。
『(……それにしても、被害者を出し過ぎた)』
今更ズルズルと引き摺る気は無いが、遺恨が残る結果となった。
『……僕自身が呪いだってこと、忘れてたのかもね』
自嘲気味な独り言は、虚しくも、誰の耳にも届かずに消えていく。
「愛くん、車の準備出来たっス!高専に戻って治療受けましょう!」
『はーい、……っと、』
立ち上がったのと ほぼ同時に、スマホが振動した。
画面には伏黒恵の文字。何かあったのだろうか。
「電話っスか?出て大丈夫っスよ」
『あぁ、ありがとう』
何となく、妙な予感を感じながらも、応答のボタンをタップした。
『もしもーし、恵くん?どったの?』
ほんの少し、暗い気持ちを繕うように明るめの声色で電話に出る。
だけどその奥からは、僕以上に暗い様子の声がした。
《……悪い、愛》
『えっ?……何、どうした?』
謝罪から始まる報告ほど、嫌な予感がするものも無いだろう。
何が言われるのかと身構えつつ、煮え切らない口調の彼を待った。
《虎杖が、……死んだ》
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時