第二十一話 不憫 ページ24
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呪霊でも、血は流れるのか。
……あぁ、違うか。
人の形を模しているから、血も存在するように錯覚しているだけだ。
『結局は呪霊だもんね?死ぬギリギリまで壊しても、呪力全部が尽きなきゃ死ねない』
「……はは、……良い趣味、……してる」
『流石になめすぎじゃない?痛い目見ることくらい分かってんだろ、余計なことはするなよ』
飛び散った血は、残念ながら朽のものだけでは無い。
僕が残穢として廊下に残った呪力を吸い取ることに集中したあまり、朽を抑えるのにまで呪力が回らなかった。
そのせいで、朽は図書室に避難していた数名を殺害した。
『……良い奴ほど死ぬってか』
僕の当時を知っていたその教師もまた、朽が殺害した人間の一人だった。
ホント、こんなとこで被害者出すとは思わなかった。
「ねぇ、……なる」
『るせぇな、いい加減戻__』
「お前は何を、している?」
ざくり。
その言葉が、己の思考を貫いた。
分かりきっていた躊躇を、無理矢理なまでにこちらの視界へと映す。
「復讐、復讐、復讐………愛の生きる意味だ」
「それなのに、どうして?君は人を助ける?」
「構わないよ、俺は止めない。君の生き方にまで口出しはしないからね」
「それでも君は、目的地まで見失っているじゃないか」
「お前は、誰を殺したい?」
確かに僕に足蹴にされているはずの、縛り上 僕の方が優位であるはずの__従えているはずのその呪霊は、まるで、僕を操っているようだった。
『(間違っていない、か。コイツが死ねば僕も死ぬ)』
僕の生は、コイツの手に握られていると言っても過言じゃない。
生存者は片手で数えられる人数。
助けられたはずの数名が助けられなかった。
朽のせいで。
……いや。
僕のせいで。
『僕が殺したいのは、僕だよ』
『僕が死ぬまでに、なるべく多くを道連れにしたいだけ』
朽に手を翳す。
そのまま、呪力を込めた。
『戻れ、朽』
「……馬鹿な愛」
朽は小さく呟いて、そのまま僕の術式の空間へと去っていった。
それから、半分開いていた図書室の扉を開く。
血塗れの地面。目も当てられない有様の死体が、いくつか転がっている。
恐怖に染まりきった生徒数名の顔がこちらを向いた。
『……体育館に避難して。道中に君らの言う化け物がいるかもしれないけど、全部僕が殺すから』
「せん、ぱい……」
『その呼び方も、やめてくれる。
皆に尊敬される花厳愛は、もうこの世に存在しないから』
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時