第十九話 使役 ページ22
◑
「花厳くん、ですか?
毎日放課後には図書室に残って予習復習。
如何にもって感じの優等生ですよね。
偶に、図書委員の仕事が大変そうだと見兼ねて手伝ってもくれるんです」
「この間教室棟に行く時にさ、先生から頼まれたのかスッゲェ量の教材運んでる子がいて。
一目散に駆けてって運ぶの手伝ってたよ。
凄いよな。人助けに命賭けてんのかってくらい」
「花厳先輩、凄い人だよな。部活に所属して無かったらしいけど、俺らの学年でも噂聞くよ。
もう転入したってのに、偉人みたいな扱い」
◑
「……あ、の人って……!」
『!』
新田ちゃんの情報通り、呪霊の巣窟となりかけていたのは、図書室から教室棟へ向かうまでの廊下一帯だった。
呪霊が現れるのは夜のはずだったが、噂が校内に拡がったことで呪霊自体の力が一気に強まり、日中でも活動できるまでになったのだと推察できる。
辺りには呪霊に襲われ逃げ惑う生徒や教師。
死亡者数名。でも、まだ助けられる人数も多い。
『朽!狩れ!!』
「この程度。」
蔓延る呪霊が一掃される。
「……チッ」
『僕がその辺の配慮怠るわけねぇだろ。一般人殺そうったって無駄でした〜ハイ残念でした〜』
「この間の仕返しかな?」
あくまでもコイツは呪いなのだと、あらゆるタイミングで思い知らされてきたのだ。
呪霊と併せて襲われていた一般人も殺そうとした朽の攻撃を、僕の境界術式でカバーしてバリアした。ざまァみやがれ。
「あの……」
「花厳先輩……」
被害にあっていた生徒らがこちらに近づくと同時に、朽の力を一時的に抑える。
呪霊の気配はまだあるから、下げさせる訳にはいかなかった。
散々偽善を振り撒いてきた結果だ。
同級生が卒業した今でも、後輩たちにまで僕の存在が知られている。
……それに。
「花厳、……」
『お久しぶりです。
その当時をハッキリと知っている教師までもが、その場に居た。
この居心地の悪さもまた、花厳家から僕に対する嫌がらせなのだろうな。
ここまでバッタリ遭遇するのは単純に僕の運が悪いだけだと思うが。
「ご家族の方から、色々とご連絡を……。それから、引き取ってくださったという保護者の方と」
『そういうの、要らないですよ。先生は
「……あぁ、……あの、事件も……すまない」
逃げ出したい、が。
任務を終えるまではそれも叶わない。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時