独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ3)

今日:22 hit、昨日:8 hit、合計:27,774 hit

第二話　具現ページ3

それから探索を続けつつ歩き回っていれば。
生徒たちが多く集まっている場面を見つける。
騒ぎの中心には、パーカーを着た生徒とタンクトップの教師がいて。

『勝負みたいだね。砲丸投げ。』

「生徒と教師が勝負って、いつの時代だよ……」

『恵くん、砲丸投げの好記録って分かる？あの人、十四メートルだってさ』

「知らねぇけど＿＿＿」

恵くんが発言を終える前に、固いもの同士がぶつかり合う音が辺りに響く。
特に砲丸投げの知識が無くても分かる。
あの重さの鉄球を数十メートル先のサッカーゴールにぶつけるのは超凡な才を持ち合わせてる。

『あれマジで呪力無しでやってんの？僕なら呪力使っても絶対無理』

「禪院先輩と同じタイプかもな。それもまぁ、こっちの世界と関わらなきゃ“ただのすげぇ奴”でしかねぇけど」

『そーだね。つか一般的にはその方が幸せなんじゃない』

「……」

僕の言葉に、彼は無言でこちらを一瞥した。
その発言の意嚮を咄嗟に察したのだろう彼は、押し黙る。

再び歩き出そうとしたところ、先程のパーカー少年が走り出す。
何やら用があるそうで、校門の方向であるこちらへ走ってくる訳だが＿＿

「『！』」

すれ違いざま、確かにその気配を感じ取った。

「おい、お前！……って、速すぎんだろ！！」

『やば』

グラウンドに集まっていた野次馬の会話によれば、五十メートルを三秒で走るとか何だとか。
どういう教育を受ければそんな身体能力になるのか、皆目見当もつかないが。

「俺は今からアイツを追う。お前はこっちに残って、呪物に寄ってきてた二級を始末しといてくれ」

『おっけ。何かあったら連絡頂戴ね』

「それじゃあ、後でな」

パーカー少年が駆けていった道を追う恵くん。
その背中を見送ってから、溜息をついた。

『＿＿どうしたの、朽(くちる)』

声をかければ、人の像を模した其れは徐ろに現れる。
……否、最初からそこには在った。
契約間において僕が許可を下したから、目の前のこの“呪霊”がその肉体を容作り、音を拾い、言葉を発することを可能にしただけだ。

「俺は呪術師でも無ければ、呪術師の為に在る呪霊でも無い。だから君の任務に何か口出しをしてやる義理はないよ」

『……』

「いやほら、君がどうしたのって尋ねるから。つまりはね、俺がこの空間に顕現した意図を君に教えてやる気は無いよっていう」

『うるせ～～！！邪魔するなら封印すんぞ！！！』

「あはは、目立ってる目立ってる」