第十七話 回帰 ページ20
「要は君の目的は復讐、でしょ？」
『……』
「それが成されるまでは協力＿＿というか服従？してあげるから。君の復讐を見届けさせてくれる？」
コイツは、呪いだ。
見たがっているんだ、僕が、壊れていく様を。
『……服従、なら、僕が命令すれば言うことを聞くってこと』
「そ。この姿なら従えさせるのに呪力も大して使わない。形を変えれば消費量は多いけど……本来の姿への変形も君の意思でしか叶わないように縛ったし。どう？なかなかの好条件でしょ」
コイツが、僕を殺さなかった理由と。
それから＿＿そもそも、コイツが何者なのか。
今の僕に、それを知る手段は存在しなかった。
「縛りの条件は一つだけ。君が復讐を遂げるまでという期間だけ。それが終わり次第、俺は君の元から去るけれど」
ニィ、と。
下衆な笑顔。
肌が泡立った。
「君の生きる理由が復讐なら、何ら文句は無いよね？」
復讐さえ終えれば、お前と契約を終え命を落とす。
僕を殺しかけた、
『＿＿っ、ふふ』
可笑しくて、馬鹿らしくて、狂ってしまいそうだった。
若しくは、もう狂っている。
構わない。どうでもいい。
僕のせいで何十人が、既に死んでいる。
罪のある人間と、無関係の人間が。
『＿＿もう、善人は辞めだ』
『沢山道連れにしてあげる。……だって僕は、悪い子だから』
◑
◑
「愛くん、着いたっス」
『ん、………あれ、寝てた？』
「爆睡っス。疲れてたんスかね？」
『ううん、大丈夫。ごめんね、新田ちゃん』
未だに少し重い目元をゴシゴシと擦って、視界を整える。
大きな溜息を吐きたくなるのを我慢して、目的地の建造物へ仰向いた。
今回の任務は、少し前まで在学していた僕の母校。
僕が高専に来るきっかけとなった舞台だった。
「聞くところによると、三日ほど前から既に呪霊の仕業と思しき怪奇現象が起こってるらしいっス。一日目は夜の巡回をしていた警備員、二日目は部活帰りの生徒。三日目はこの現象を聞き入れた教師数名。全員病院へ搬送され、意識不明っス」
『怪奇現象って？』
「図書室から教室棟へ向かうまでの廊下を通ると、真っ黒でドロドロな妖怪に襲われる……という噂だそうで」
その内容を聞き、顔を顰める。
やっぱりこの任務、あまりにも“意図的”だ。
「入校許可は下りてるっス。早速入ってみましょう」
◑
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作者名：リナ | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2021年2月20日 21時
