独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ19)

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第十六話　約諾ページ19

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「可哀想に」

憐憫と侮蔑の混ざった、丹色の瞳。
その声色に、温情から来る憐れみなど無いことは察しが着いていた。

目の前にあるのは、関わりを過剰なまでに禁止されていた呪いの類。所謂、呪霊。

「痛い？苦しい？……誰かに、助けて欲しい？」

愉悦が混ざる。
地に伏したまま、皮膚に赤い血が浸透していくことすらも避けられず、その呪霊を睨んだ。

『……な、んで、………僕、は………ッ』

ポロポロと、透明の雫が零れ落ちる。
涙に混ざり薄くなる赤。
それすらも気に止められないほどの激痛が身体中に走っていた。

『……くは、………正し、こと……』

侵されていく。
真っ黒な闇に、全てが。

「助けてあげようか」

『………っ、は』

意識が遠のく。
どうにも出来ないまま、ただ、その言葉が頭上から降った。

それ、でも。
僕がここで生きることを望めば、全てが台無しになる。

耐えてきたものが、守ってきたものが、抱えてきたものが。

「人の為に生きてきたのかな？そして人の為に死ぬ……と。だけど、どうだろうね。今ここで死ぬ事は、あまりにも無意味だと思うけど」

無意味な、死。
でも、そんなの。

僕の今日までの人生だって、僕には何の意味も無かったのに。

「憎いとは思わない？死ぬ為に生かされたこと、その死すら、自分の為ではないこと」

『……ぁ、……』

悪魔の囁きが、だけど、希望の糸が、目の前に垂らされた。

もう、どうでも良くなっていた。

『なんでも、いい、』

生きることも死ぬこともどうでも良くなった。
守ることも殺すことも、どうでも良くなった。
感覚が、殺されていった。

『……殺し、たい』

『全部、全部、アイツらがしてきた事全部ッ！！ぶっ壊してやりたい！！殺してやりたい……ッ！！』

絞り出した声。それとほぼ同時に、己の死が一気に目前にまで迫ったことを悟る。
あと一秒。
僕は、事切れる。

「契約完了、っと」

奥底の読めない笑みが、こちらに向いた。
この瞬間＿＿＿真っ黒で、真っ暗な、触れてはいけないものを引き寄せたのだと。

むくりと起き上がる。
先程の痛みは尾を引いてはいるものの、かなり和らいでいた。

「なかなか強引な契約＿＿縛りだけど、君が優位なものだから大丈夫でしょ？」

『……しば、り』

知識だけはある。
お互いが承認した上で結ばれる約束。
破れば破った側に罰が与えられる。

僕が何でもいいと言ったから。

問答無用で、結ばれたらしい。