独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ17)

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第十四話　理由ページ17

『……気配、まだ消えないね。野薔薇の方かな』

「よっし、急ぐか」

早足で階段を登ってゆく。
彼女も呪術師としては虎杖よりも手馴れているとは思うけれど、未だに呪霊の気配が消えないのは手こずっている証拠ではないかと推察できる。

何度目かの階段を登りきる頃。
その色が、濃くなった。

『ストップ！』

「ぐぇっ」

虎杖の制服のパーカーをグイと引っ張れば、首が締まったのか情けない声を洩らした。
彼の様子は気に留めず、その方向を指さした。

『この辺り。だいぶ近い』

「じゃあ、壁ぶっ壊すぞ」

『………あ？』

「の方が早ェだろ！」

バコッと、あまり聞き慣れない音と共に目の前の壁に穴が開く。

「アレ？外した？」

手応えが無かったらしい虎杖は、そのまま屠坐魔で壁の穴を広げ呪霊をぶん殴る。

呪霊、と子供。
呪霊は四級……子供は人質。

呪霊が素早く子供の首元に手を伸ばす。
鋭利な爪が首に差し掛かるその直前で、僕が投げたナイフが腕を切断した。

吹っ飛びかけた子供を虎杖がキャッチ。
その隙に呪霊が逃亡を謀る。

「あっ逃げた！」

『境界＿＿』

「逃すか！！虎杖！！その腕よこせ！！」

『……(大丈夫そうか)』

虎杖が呪霊の腕を野薔薇に向けて投げれば、彼女はその腕の上に藁人形を置く。

「……藁人形？」

『陰湿でいいね！』

「芻霊呪法共鳴りッ！！」

藁人形へ、釘が刺される。
それと同時に、外へ逃げ出した呪霊が共鳴するように攻撃を受けて消滅した。

「だから言ったろ！一人は危ねー真面目にやれって！！」

「一人は危ないなんて言われてないわよ！！」

「言っ……てなかった！？」

『なかったねー』

呪霊により怪我をした少年の傷の手当をしながら答える。
二人とも、それなりに気が合いそうなんだけどな。

「つーか何食って育てば素手で壁ブチ破れんのよ！！」

「鉄コンじゃなかったんだよ！！」

「鉄コンじゃなくても無理よ普通！！」

それに関しては激しく同意。
僕が彼の言動を理解するより早く、壁が破られていたわけだが。

「俺もしこたま聞かれたけどさ、オマエなんで呪術高専来たんだよ」

「田舎が嫌で東京に住みたかったから！！！」

命懸けの仕事だけど、その理由で大丈夫なのだろうか。
同じことを思ったらしく、虎杖が同様の質問をする。

「懸けられるわ。私が私であるためだもの」

理由、じゃないか。
彼女の場合、それに基づく感情だ。

僕の“理由”よりよっぽど真面で安心した。