第十二話 須臾 ページ14
案の定野薔薇にブチ切れられた虎杖は、華麗な足蹴を受けていた。
そそくさと上へ向かう野薔薇。二手に分かれるのは決定だそうだ。
……コイツと二人行動は僕も嫌なんだけどな。
「ったくよ……テメーは言うほどモテんのかよ……」
『あ、』
唐突に現れた呪霊が、鋭利な腕で虎杖の首を狙う。
五条先生に渡された呪具＿＿屠坐魔でその腕を切断。
『(……反射神経も動体視力も卓越してる)』
不安定な敵の足元を潜り抜け、即座に足を切り落とす。そのまま頭部に刃を刺し込み、とどめを刺した。
「うん。動けんね、俺」
『………及第点』
「すっげー顔」
呪霊の上から立ち上がり、僕の後に続く虎杖。
不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「なぁ、愛ってどんな技使うの？伏黒の式神みたいなやつ」
『僕はそんな特殊なやつじゃないよ。恵くんみたいに素質があるって感じでもねーし』
「そうなの？どんな＿＿＿」
肌に纏わりつく様な、陰気な空気が濃くなる。
このビルに巣食ってる一番の大物はコイツかな。
「おい、二人で合わせて……」
『見せたげよっか、僕の術式』
「え？一人で倒せんのアレ！？」
『お前と僕じゃレベチだっつの』
得意げな笑みを見せてから、呪霊と向き直る。
丸い紋章が刻まれた両手のひらを床に当てる。
『境界伸張』
手のひらが触れた箇所から、沸沸と境界が拡がっていく。
物質と物質を切り裂く、物理法則すら無視する呪力の境界。
生成する為に生成された、結晶空間。
呪力の境界は壁を伝い、呪霊の周りを取り囲むように拡がった。
『生成結晶
その言霊を合図に、境界から結晶体が飛び出した。
呪霊の肉身を過剰なまでに穿つ。
辺りに飛び散る紅血を確認してから、境界を閉じた。
「……」
『終わり。雑魚だったでしょ』
「すげー！触ってねぇじゃん！動いてねーじゃん！」
『花厳家の術式は、体＿＿特に手のひらに刻み込んだ紋章から発動される。ほら、こういうの』
両手の円の中には、複雑な呪印が刻み込まれている。
それを彼の前に見せれば、興味深そうに顔を近づけた。
『手のひらの紋章から特殊な空間を広げて、そこから呪力の結晶体を生成する。作り出した結晶体が呪具になるってわけ。』
「呪具って、この屠坐魔みたいな？」
『僕が作れる結晶体呪具は、純度も低いから呪力供給が途絶えたら数分もせずに消滅しちゃうけどね。術式を上手く使いこなせる人間ならそういう呪具と同レベルのものも作れる』
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作者名：リナ | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2021年2月20日 21時
