第九話 善性 ページ11
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『へぇ、じゃあ真希さん達はまだちょっとかかるんだ。そういや高専に新しい一年来てるよ、顔出さなくていいの？』
「明太子」
『まぁ向こうも手続きとかで忙しいか。僕はあんまりアイツ好きじゃないんだけど』
「昆布？」
『え、えーっと……』
コンビニを出て、近くの公園で買ったものを広げてプチ休憩を取っていた。
新商品がどうだとか、お互い任務はどうだったとか話していれば、虎杖の話になったわけだが……。
『……なんか、根っからの善人って感じなので。僕は本能的に、脊髄反射で……』
「すじこ」
『分かってるってば！僕だって小学生レベルの好き嫌いしてる訳じゃないし！だって善い奴が呪術師なんてしたら＿＿……あ、』
「しゃけ。いくら」
『ちっ、違うけど！？僕悪い子なんで！親切心とかじゃねーもん！！』
手に持っていたおにぎりに力が籠り、中の具が勢いよく飛び出した。
それは弧を描いて公園の砂の上に落ちる。
あーあ、新商品の激辛ラー油味。
「……ツナマヨ」
『棘くんはこれから真希さん達と合流だっけ』
「しゃけ」
『じゃあこの辺は差し入れにどうぞ。あと、ちょっとは金払わせろ』
「おっかか〜」
クソ、ヘラヘラしやがって。
棘くんとコンビニで遭遇すると毎回奢られてる気がするな。僕の浪費癖を見抜いてのことなのだろうか。
「高菜、明太子」
『ん、いってらっしゃい』
緩く手を振ってから去っていく先輩の後ろ姿を見送ってから、再び公園のベンチに座した。
買うものは控え目にしたはずなのだが、自分が入れた分に、さっき差し入れ用に渡した分を差し引いても、それを遥かに上回る量の商品が残されていた。
『……善い人だな、何奴も此奴も』
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「あ、ちょうどいいところに戻ってきたね！愛！」
『……なに』
「明日はおでかけだよ！四人目の一年生を迎えに行きます！」
パンッ、と手を叩いて嬉しそうにそう告げる五条先生。
学長との面談は無事終了したらしい。
虎杖の頬に殴られた跡があるのを見るに、まぁある程度は手こずった様だけれど。
「ん？その袋どしたん？パンパンに入ってっけど」
「そいつ浪費癖あるからな。趣味は買い物」
『つーことで分けたげる。適当に持ってって』
「へー！良いの？」
『いいから言ってんだよ』
「なんで必要以上に突っかかられんだろ……」
どうせ平和なのはすぐ終わる。
虎杖が普通でいられる時間なんて、そう長いものじゃないのだから。
『……好きなのを選びなよ』
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作者名：リナ | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2021年2月20日 21時
