第一話 紛失 ページ2
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「百葉箱!?そんな所に特級呪物保管するとか馬鹿過ぎるでしょ」
《アハハ。でもおかげで回収も楽でしょ》
スマホ越しに聞こえる声に呆れつつ、百葉箱の扉を開ける。
『あり?』
「……ないですよ」
《え?》
「百葉箱、空っぽです」
“捜し物”はそこには無い。
特級呪物の捜索、そう簡単にいくものではないと何となく察しはついていたが。
《マジで?ウケるね(笑)》
「ぶん殴りますよ……」
《それ回収するまで帰ってきちゃ駄目だから》
じゃあね〜、と呑気な声を最後に、通話は終了される。所謂、問題の丸投げである。
不機嫌そうな表情をした同級生__伏黒恵は、通話終了の文字が映ったスマホに視線を落とす。
『あーあ。めんどくさ。恵くんあと頼んでいい?僕帰るから』
「ダメに決まってんだろ。ほら行くぞ、さっさと終わらせて五条先生殴ろう」
『それは さんせーい』
とは言え、ここから手がかりを捜すには__、考え込んでいれば、恵くんは何も言わずに歩き出す。
『はは、さすが頭脳派』
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_翌日
「この学校の生徒が持ち去ったってのが可能性としては一番高いだろ。どうせ面白半分でな」
『の方が、捜索としては楽だしねぇ。これで呪霊とか呪詛師が絡んでたら死ぬほど面倒だけど』
「とりあえずは 校内にある前提で捜すぞ。あれだけの特級だ、気配の濃い箇所を重点的に捜そう」
『りょうかーい』
軽い会話を交わしつつ(七割僕が話しかけているけど)、辿り着いたのは校内のラグビー場だった。
「死体でも埋まってんのか?」
『呪霊多いね。あれは二級かな〜』
「特級呪物の影響か……」
さっさと回収しないと、僕ら二人じゃ手に負えない等級の呪霊も現れるだろう。
とはいえ__
「気配が大きすぎる。近くにいるのかさえ分からねぇ」
『だね。恵くんのワンちゃんでもどうにも出来ないレベルに広範囲に気配が分散してる』
「玉犬な」
ラグビー場を出て、階段を登る恵くん。
彼の背に、冗談めいた口調で声をかける。
『もういっそ片っ端から祓っちゃう?そしたら邪魔な気配も蹴散らせるんじゃない?』
「最悪そうするしかねぇな。隅々まで捜せば流石に見つかるだろ」
『いや、冗談なんだけど。ローラー作戦なら僕降りるからね!』
「また狗巻先輩に怒られんぞ」
『……チッ!』
かなり大きめの舌打ちをしたものの、僕が本気で降りる気がないことくらい、彼は分かりきっているのだろう。
気にする様子もなく歩みを進めた。
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2021年2月20日 21時