独り白【呪術廻戦】【男主】 (ページ1)

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第零話　暗澹ページ1

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「良(はる)くん。本当に一人で大丈夫なんですか？大変なら歌姫先生が同行するって言ってましたけど……」

「大丈夫。家の事だ、部外者が立ち入ると本家が黙っていないだろうから」

「花厳(かざり)の人達、怖いですもんね……」

水色の髪の同級生は、心配げに声をかけた後、複雑そうな顔を浮かべた。
俺は笑みを浮かべ、手を上げる。

「それじゃあ、急ぐから」

「はい。いってらっしゃい。」

一線を引くような居心地の悪い距離感は、いつの間にか慣れてしまっていた。
その事実に悲観すべきだろうか、正常な感覚さえ何処かへ追いやられてしまうほどには、俺の肩書きは窮屈なものだったのだと思う。

【花厳家と連絡が取れなくなった。本家のお偉方の無事は確認できたが、分家の方は未だに＿】

【良の育った東北の別家が酷い有様らしい。東京校から数名が調査に向かったが、御両親の安否も気になるだろう。直ぐに向かうといい】

高専を後にして、入学から一度も帰っていない実家への道を辿る。
所要時間は凡そ五時間。電車に揺られながら、気を落ち着かせるために下らないことを思考する。

そんな細やかな抵抗すら無意味に、スマホが振動した。
指先に伝わるその震えの先に在るものは、迚もじゃないが良い報せとは思えなかった。

「＿＿＿もしもし、」

《良？
今、別家に派遣された術師からの連絡で……。
………お母様が、お亡くなりになられたと＿＿》

プツン。

繋がっていた、何かが。
音を立てて、断ち切られる。

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「花厳良です。現状報告をお願いします」

「調査は粗方済みました。屋敷内に居た十八名のうち十四名の死亡が確認。残り四名は救急搬送されましたが、それも厳しい状況かと」

「……ありがとう、ございます」

渡された書類には、死亡確認の取れた名前が記されていた。
母親の名前。従兄弟の名前。面倒を見てくれた使用人の名前。名前。名前。名前。
見知った文字の羅列が、無慈悲なまでに表記されている。

「それで、事件の背景ですが」

「現れた呪霊は三級以下の低級呪霊ばかりでした。屋敷内にいた数名の呪術師でも対応出来るはずのレベルです」

「……？………なら、何故………」

「解剖により。外側からの攻撃ではなく、内側から侵食されたような痕跡があると」

「＿＿＿＿」

絶句した。

それから幾許かの沈黙を経て、何とか声を絞り出す。

「……愛(なる)は……？
………弟は今、どこにいる？」