私と君とあの人。【三輪秀次】-完-

21.気づかれざる視線 ページ21

side_奈良坂


苗字名前は、可愛くて人当たりも良く、ボーダー隊員としても実力のある、そんな人物だと認識していた。

旧ボーダー時代からいる古株で、中学生にしてA級隊員。彼女に憧れてボーダーを志願する者も少なくないと聞く。



『奈良坂くん！編み物は得意ですか？』

とても恥ずかしそうに尋ねてくる彼女に、思わず笑ってしまったのは内緒だ。


うちの隊の隊長の誕生日に、マフラーを編んでプレゼントしたいらしい。
正直、三輪が羨ましいと思った。

彼女は三輪のどこに惹かれたのだろう。
そんなことばかり考えている自分がいる。


三輪隊と名前で新年会を終えてはや1週間が経とうとしていた。
あと10日ほどで、ボーダー推薦の普通校の入試がある。進学校はその1週間後だ。



奈良坂「あれ？名前？なんで射撃訓練所にいるんだ？」

『やっほー奈良坂くん、勉強飽きたし、木崎さんみたいなパーフェクトオールラウンダーでも目指そうかと思って、ちょっと古寺くんにトリガー借りてきちゃった』

奈良坂「射撃したことあるの？」


『ない！』


キラキラと形容できそうなほど輝いた瞳で、自信ありげに彼女は言った。


奈良坂「、、、とりあえず、撃ってみよう」




結果から言うと彼女に射撃の素質はあまりなかった。
トリオン量が多すぎて、的を消滅させてしまうのが主な原因だが、なにより集中力がなかった。

『やっぱり狙撃手はすごいなぁ〜〜。私には無理だよ』

ここは慰めるべきなのだろうか。
いや、何も言わないでおこう。



ふと名前が攻撃手の訓練所で立ち止まる。
中では1人、仮想訓練をしている人影があった。

名前の横顔は憂いを帯びている。

奈良坂「風間さんだね」

『うん』

前にもこのような現場を見た。
名前が訓練している風間さんを見つめていて、名前が去った後に、

『じゃ、私そろそろ勉強戻るね！
狙撃付き合ってくれてありがと〜〜』



ほら、風間さんは必ず、名前が背中を見せると、その背中をじっと見つめてるんだ。

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