第五十八話 言いたいことだけ ページ9
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『……という感じですよね、私の中学時代』
新田さんの車の中。
あまり思い出したくはない中学時代の話をする。
先程何があったのかと問い詰められた私は、後で話すと言ってひとまず情報共有をした。
何やら任務の難易度が引き上がったらしくて、伏黒くんは学校へ挨拶に行くからと先に帰るように言われた。
……まぁ、恐らくそれ以外の理由もあったのだろうけど。
「……アンタそれ、虎杖と大して変わらないってことじゃない」
『………まぁ』
「呪術の危険度なんてガン無視して呪いを自ら受けたってことでしょ。部活のホイッスルの代替って分、切羽詰まって指を食べた虎杖より酷いし」
『これ真希さんに言った時手叩いて笑われたんだよな……』
「そらそうなるわ」
それから野薔薇ちゃんは、食べてないだけマシかと言い放ったが、まるで拾い食いをすると思われているみたいな言い回しは少しやめて欲しかった。
「さっきちょっと怒ったのは、その男の子の話が地雷だったん?」
『そ。彼はさ、すっごく誠実に向き合ってくれたから。それに対して周りから誤解されるのは報われないでしょ』
君が大事にしたものは否定させないと決めたから。
死んでる時点で私のエゴだし、プライドでしかないんだけど。
『女の子達もね、怖い思いをしたんだよ。何となーく私が原因なのも気がついていただろうから、ただでさえ無かった好感度がマイナスになったってだけ』
「地元に来たくなかったのはそれかぁ」
『うぅん、まぁね』
会いたくなかったし、この場所に来ること自体が少し怖かった。
何もかもから目を逸らしていた弱い自分を思い出すから。
今も、根本は変わっていないとは思うけど。
『新田さん、ここで下ろして貰えますか』
「良いッスけど……忘れものッスか?」
『そんなとこです。虎杖くん、野薔薇ちゃん、行こうか』
二人に声を掛ければ、頷いてから降車する。
少し車を走らせてしまったが、八十八橋からはそこまで距離はない。
……伏黒くんは、一人でこの件を解決させようとしているようだ。
『伏黒くんは、私の恩人なんだよ』
「……恩人?」
『うん。白黒の私の人生に、色があることを教えてくれた人』
君にその意図は無かったし、偶然で引き合わされただけだけど。
でも私は、君が君の大事にしているものを貫いたから、君と出会えたんだ。
名前を知らないクラスメイト、よりももっと近くに寄れた。
私の人生で初めての友達は、君なんだよ。
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年3月18日 8時