検索窓
今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:8,738 hit

第五十四話 呪いの言葉 ページ5

□■





それから、走った。
校内を走り回った。
誰もいないかもしれなかったけど、誰かに会える気がして。

そして見かけたのは、例の男の子だった。


「く、ずはら……さん………」

いつもと違うのは、彼が助かる見込みの無いほどに大怪我をしていること。いつも笑顔な彼がボロボロに涙を流していること。恐怖で、いっぱいになっていること。
だけど私を呼ぶ声だけは、いつも通りだった。

_____蛇の呪いだ。

そしてこれはたぶん、私のせいだ。
本能的に理解した。
教師が誰もいないのも、彼はここにいるのも。


私が、殺したいくらいに憎んでいる人間しか、ここにはいないのだ。


私と縁を結んだイクチが、私の願いを叶えようとしているのだと。本能が叫んだ。


「ご、めん……おれ……」

「くる、しい……たすけて………」


呪いの言葉だった。
恐怖に満ちた呪いの言葉。

今まで彼にかけられた言葉もそう。
自分を諦めた自分に掛ける、優しい言葉は私にとって呪いだった。
だから私は君が嫌いだった。
君はきっと、容姿以外のどこかから、私を好きだっただろうけど。

『殺したら、いい?』

その声は聞いたことがないくらいに冷たかった。
私の手には伏黒くんから渡された護身用の呪具があった。
付け焼き刃だろうが、これで呪いを倒せと言われた。

「きみに、なら…………」

君は、私にとっての呪いだ。





くずはら、さん。
きみを、おもってのこと、なんて、なんにもできなかった、けど。

おれは、きみのおもう、きみがしたいことを、してほしい。

おれのことなんて、なまえなんて、わすれたって、かまわないから。







目の前で倒れていた男の子は、少しずつ体温を失っていった。
私が手にした、この呪いのせいで。


『……約束、させて』


『逃げたり、しないから』


『君が大事にしたものだけは、誰にも否定させないって』


この約束も、宣言も、君のものじゃない。
私の、私のための、私だけのもの。
そうすればもう君を呪わないはずだ。
名前も知らない親切な少年。
君のことなんて、やっぱり知らない。


____君にとっての損って何?


知り合って間もない男が、失礼極まりなく問いかけた。
今ならハッキリ言える。
私に損は無いし、得は無いと。



『どうでもいいとめんどくさいは、もう辞めだ』



偏っていて、矛盾していて、自己満足のそれで構わない。
私の思う正解を、私が勝手に選んでやろう。

全部、私のために。

第五十五話 主従関係→←第五十三話 どうだって



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (66 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
192人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , リナ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2022年3月18日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。