限界オタクの倫理観で呪術師をやってみた２【呪術廻戦】 (ページ14)

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第六十三話　追憶ページ14

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「＿＿＿全寮制の学校……？」

リビングに広がる空気が、一瞬にして塗り変わるのが分かった。
困惑の色を見せる母と、明らかに不機嫌な表情の父。
こうなるなんて簡単に分かっていたけれど、私の内心は随分と冷静だった。

「駄目だ、家から通える距離にしろ」
『なんで』
「誰が金を払うと思ってる」
『自分で払う、バイトして』
「どうせ最後に泣きついてくるのがオチだ」

何をやっているのだろう、と時々思ってしまう。
無駄なことだ、ずっと平行線。
ここに私の味方はいないし、歩み寄る意思もない。
私はいつだってこの場所で、マイナスなまま生きている。

『邪魔なら縁でもなんでも切ればいいじゃん』
「親に向かって……！」
『向かって思ったことも言っちゃいけないの、貴方達に頼るのが駄目なら私一人でどうにかするって話でしょ』

切ってしまえばもうさよならできる。
泣きつかれるのが嫌なら、私のために使うお金を極力減らしたいなら。
簡単なことなのに、目の前の人達はどうして認めてくれない。

「……A」

久しぶりに聞いた。
ただ名前を呼ばれることじゃなくて、母親から、その言葉を口にされることが。
何を込められたかも知らない、自分だけのための名前を。

「お父さんは、分からない、けれどね」
『……』
「私は、お母さんは。Aと離れるのは寂しいよ」
『……物理的距離の話。近くにいても、何にも話さないのに』

一瞬熱を持った怒りのようなものは、諭すみたいな母の声で和らいで。
それでも返した言葉はあまりにも鋭くて、そんな自分が、少し嫌いに思った。

「うん。何にもしてあげられなくて、ごめんね。だから、寂しいけれど、引き止める権利は私にはないの」

この人は自分の親なんだ、と悟った。
その言葉は真っ直ぐで、何の揺らぎもなく芯が通る。
理屈だとか小難しい色んなものが纏わりついて、それでも貴方の中で確実に存在する、譲りたくないもの。
それが見えた気がしたから。

『いつもみたいにお皿割って怒鳴ればいいのに』
「……」
『適当に進学して、適当に就職して、そのうち家を出てってくれればって。思ってたんだろうし、それなら早いこと済ませるよってだけじゃないの』

眉間に皺を寄せたまま、父は何も言わない。
母は俯いて、今にも泣きそうだった。
ああ、やっぱり。
貴方の口から私の名前が呼ばれることはない。

「……好きにすればいい」
『うん、そうするよ』

分かり合おうと、そんなつもりは無いのだから。