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第六十一話 鉛の一瞬 ページ12

『これで最、後!』

モグラ叩きの出口を全て潰して、伏黒くんと協力すればモグラ呪霊は簡単に祓うことができた。
隣の彼が疲弊した声音まじりにため息を吐いたのが聞こえた。

『これでお姉さんたちの方は何とかなりそうだね。すぐ野薔薇ちゃんたちと合流__』

ぴたりと音が止まる。
二人して上を見上げて、明らかに濃い呪霊の気配。
それが異様な空気を放つ、祓わなければならない物だということは口にせずとも分かった。

『わぁかった。アイツら、指か』
「……葛原、お前には荷が重い」
『笑わせるじゃん、君もだろ』

現れたのは特級レベルの呪霊。
人間と酷似した形容の、にたりと口角を上げて余裕気な呪い。
伏黒くんが呪具を構える。
手に握ったナイフをポケットに締まい、木の枝を数本拾い上げる。
あぁ、どうかここが墓場になりませんように。

呪力の塊が目にも止まらぬスピードで貫かれる。
防いだ伏黒くんの刀が一瞬にして真っ二つになった。

『ぐぅッ!』
「下がれ葛原!」
『(むり、速……っ!)』

呪霊が攻撃を与える場所に咥えたままの笛から蛇を召喚して何とか防ぐ。
それで精一杯だ、とてもじゃないが攻撃には回れない。

ここが森じゃなければ即死だったと思う。
細い枝じゃなくて、それなりの太さのものがあるから攻撃が防げる。

一瞬で蛇が消滅して、地面に落ちた替えを拾い上げて。
私と伏黒くん、ほぼ交互に回ってくる攻撃に何とかギリギリ対応している。
それもまぁ、お互い数秒にして血まみれなのだけど。

「鵺」

渾身の一撃を防ぐ。
せめて一発くらいと踏み込んで息を吹き込んだところで、呪霊の攻撃が彼の顔面に直撃した。
吹っ飛んで岩の壁に激突。
動かない、気絶した。
鵺も玉犬も溶けて消滅したようだ。

『……はぁ、なるほど、タイマンね、はは』

イクチ、は、ダメだ。
この呪霊なら一発だろうけど、それ以外も全部無くなる。
周辺の人間も呪霊も死ぬ。私も含めて。

「っくぅ!……七歩蛇ァ!」

耳を劈く笛の音。
十数体の赤い蛇が現れて、目の前の呪霊に襲いかかる。
こんな量を一気に召喚したのは初めてだった。
イクチほどじゃないけれど死ぬほど死にそう。何だそれ。

消滅しない蛇に仕組みを理解した呪霊が私へ襲いかかる。
拳を一発。軌道が見えて腕で防ぐ。バキ、と鈍い音。
悲鳴すら上がらなかった。

今度は横から、呪力の攻撃。
近くの木の枝を折って数本投げる。
笛の音で変貌したそれは、一瞬にして溶けて消えた。



脳に響く、衝撃と激痛。

第六十二話 違える感謝→←第六十話 別件まみれ



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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2022年3月18日 8時

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