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第六十話 別件まみれ ページ11

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「出たな」
「祓い甲斐がありそうね」

川を跨いだ瞬間、周辺の森の木々が呪いの色に一変する。
得体の知れない物体が所狭しと並ぶ中、恐らく本体と思しきモグラのような呪霊が現れた。

それから。

「あ゛?なんだぁ?先客かぁ?」

背後に何の音もなく現れたのは、あまりにも場違いな別の呪霊。

「伏黒、コイツ別件だよな」
「……あぁ」
「じゃあオマエらはそっち集中しろ。コイツは俺が祓う」

虎杖くんの言葉を合図に、戦闘が開始する。
別件の呪霊の攻撃がこちらへ回らないよう距離を置いての動き。凄いな彼、咄嗟の時の頭の回転。

伏黒くん、野薔薇ちゃん、私はというと、呪霊本体の出口らしき場所を虱潰しに破壊していっている。
途方もないけれど、着実に逃げ道は塞げているはずだ。

『ぃよいしょぉ!』
「アンタ、ほんとに呪術師とは思えない戦い方するわね?」
『だってどう見てもちっせぇ蛇でどうにかなる相手じゃないじゃん!?』
「そのまま出口潰し続けてくれ、たぶん反撃は無い」
『無い、なんで?』

帳の外での戦闘用に所持しているナイフと手榴弾の残数を確認しつつ、伏黒くんの言葉に耳を傾ける。
彼曰く、呪いの効力が強く広範囲のためその分本体は弱っているらしい。
呪術関係あるある、メリットデメリットの差し引きってやつか。

「!」
「釘崎!」
『へあっ!?』

突如、野薔薇ちゃんの後ろの岩から真っ黒な隙間が生まれて。
人間のものと大差ない手が伸び、彼女の腕を掴み引きずり込む。

「問題ない!アンタらはモグラを叩け」

トプンと水の音。
どこかへワープでもされたのだと思う。
少なくとも見える範囲に彼女の姿は無い。
モグラとも虎杖くんと対峙している呪霊とも別の術式。
なんでこうも色々出てくるんだこの状況。

「なんだぁ?兄者かぁ?俺もっ!」
「あ゛ぁ!?逃げた!?」

再び現れた黒い沼のような隙間に逃げ込んだのは、流暢に人語を話す別件呪霊。
あの呪霊とは別に味方の呪霊がいるのだ、たぶん。
だとしたら、

「そのまま追え!」
『野薔薇ちゃんもそっち行った!』

「予想以上に面倒くせぇのとバッティングしてるかもしんねぇ!逆にコッチは想定よりずっと楽だ!釘崎優先!追え!」

「お前らも、やばくなったら出てこいよ……!」

さっさと行けというジェスチャーの伏黒くんに、サムズアップの自分。
なんだ、私もそっちやれば良かった。

『さっきの呪霊あれだ、フワッティーに似てんだわ』
「さっさと片して合流すんぞ」
『無視』

第六十一話 鉛の一瞬→←第五十九話 友人だから



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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2022年3月18日 8時

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