第五十一話 損得なし ページ2
「僕の仕事は正しく、君が何者かを探るっていうのでね。万一危険分子だったら警戒する必要があるから」
『危険分子ならそれ言わない方がいいんじゃないすか……』
「大丈夫だよ、僕に勝てるわけないし」
『やべー……』
それだけ自信があるのに、なぜ私は危険分子とかに疑われているのだろうか。
そりゃ呪術とか、だいぶデリケートな問題ではあるけれど、何者かとか疑われるような出自ではない。ビビりすぎじゃないか。
『見ての通り、やや拗れ気味の家庭生まれのしがない陰キャ女ですよ。なんか変なとこあります?』
「簡単に言うと、性格が変」
『敬語やめたろ、失礼極まりねぇわ嫌いだわコイツ』
「そういうとこも含めてね」
というか、動じず学校に向かっているがこの光景、結構シュールなんじゃないか。
高身長白髪男と並んで歩く目立たない陰キャ女の登校風景。
変な噂でも立てられたらめんどくさすぎて屋上から飛び降りてしまいそうだ。
「君のその左腕ね、めちゃくちゃ重い呪いが掛かっているんだよ」
『聞いた聞いた、伝説級の呪霊からの呪いだとか何とか』
「最悪死んじゃう」
『……まぁ、言い切られなくても察するけど』
「何で怖がんないの?」
『別にどうなってもいいので……』
「死んでも?」
『何でも』
ふぅん、と随分淡白な返事。
警戒とか言う割にあんまり興味ねぇんじゃねーかよ。
「生きてて楽しい?」
『楽しいこともあるけど、基本は普通。楽しくなかったら死ぬってのも安直だからしないかなぁ』
「今回協力してくれた動機は?」
『協力はしても損がないから』
じゃあ、と続きを紡がれる。
その言葉に、ドクンと心臓が跳ねる感覚がした。
「君にとっての損って何?」
死ぬことですら損じゃないなら、他に何が損なのかって。
そりゃそうだ、この流れであればその疑問に行き着くのは必然で、でも私は考えたこともなかった。
だって、私には得も損もない。
怖くなったら全部遮断してしまうから。
「葛原さん!」
『あ、……え、』
「おはよう。この人誰?お兄さん?」
『うん、まぁ、知り合い……』
私に少しだけ親切なチームメイト。
昨日でもう縁も切ったと思っていた男の子だった。
「A」
『えっ?はい、何』
「また恵から、協力に関しては話すよ。学業頑張って」
『……はぁ』
突然名前を呼ばれて大袈裟に肩が跳ねた。
名前とか、呼ばれたのいつぶりだ。
父も母も呼ばないから、学校行事の業務的なものを除いたら久しぶりに聞いた。
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作者名:リナ | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年3月18日 8時