【番外編5】青春ってこんなこと ページ45
「はい、ミルクティーで良かった？」
「…うん、ありがと。」
＿＿＿＿＿昨年、冬。
街はそろそろクリスマスムードだ。
私たちはこういったイベントを祝えるほど暇ではないけれど、昔の自分はこんな小さなイベントですらとても楽しみにしていたことと思い出す。
「「……」」
…沈黙。
「菅乃。寮の前のベンチですることかなぁ、これ」
「いやぁ、寒いねー。」
私、八戸琴香は寮生活の生徒のひとり。
寮利用者は全校生徒の4分の1もおらず、広い部屋を少ない生徒が利用するという、豪華な制度となっている。
これでも朝昼晩とご飯付きで、とっても便利なのだ。
「にしても色々あったなぁ、今年。こんな組織に入ると思ってなかったし」
「だね。しかも菅乃とセットだとは思わなかったよ。」
苦笑まじりにふわりと笑えば、同じく苦笑を漏らす菅乃。
私は缶に入ったミルクティーを喉に流した。
「なぁ。…真紅って、大丈夫なのか？」
「平気だよ？まぁ、B種の人が圧倒的に多いからちょっと新鮮だけど…。他の組織よりもちゃんと周りを見えてる感じがするよ。」
リーダーの考えは他組織からよく思われていないそうだから、きっとそれを心配してのことだろう。
私は、リーダーに会ったことすらないが。
「クリスマスだなー。…もうすぐ」
「プレゼント、何が良い？」
「そーだなぁー。」
手にあるカフェオレの缶を一定のリズムでつつく彼。
寒いからだろう、頬も鼻も少し赤い。
「…八戸はさ。ずっとここに居たい？」
「……。…どうして？」
なんだか分からないけれど、胸のざわつきを抑えるには、平然とミルクティーを飲むくらいしか思い浮かばなくて。
「俺は、お前がいるところにいるからさ。」
菅乃の柔らかな笑顔に、ぎゅう と胸を締め付けられる。
「…私も、……きっと そうだよ」
嘘なんてついていない。
そうでありたいと、私は願っている。
だけど、…もし。
＊
「俺が、守ってやるから」
「……っ」
不安を拭い去るようにそう告げた彼の顔が、なぜか見れなかった。
＊＊＊＊＊
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
