二人の任務 ページ41
「…おかえり、新人ちゃん。今日は真夏帰り遅いってさ」
『残業ですか？』
「それもだし、面会時間ギリギリまでいるみたい」
透さんの病院に行くらしい。
退院はそう遠くないし、心配することはないだろうけれど。
『ご飯食べました？』
「ううん。作ってくれる？」
『リクエストありますか？』
カバンをソファに下ろし、手を洗いながら尋ねる。
冷蔵庫には十分な量の材料はある。
「片手で食べられるのが良いなぁ。今ちょっと手離せないから」
『？』
何故だろうか、という疑問に彼の方を見るが。
「なに、あーんしたいの？別に良いけど」
『違いますけど…お仕事中ですか？』
「…真紅の子の任務手伝ってんの。情報送ってるだけだけどね」
と、麦茶を飲みながらパソコンからは目を離さない惠さん。
真紅の子…と言っても、まぁ数は多いから多分 分からないだろうけど。
『じゃあ、パンに適当に挟みますね。調味料は…』
「お任せでいいよ」
変な組み合わせの調味料をかけることは少なくなった惠さん。
味音痴は相変わらずだけれど。
フライパンに油をひき、牛肉を炒め始める。
その間にも、キーボードの沈む音。
「……新人ちゃん、轟兄妹って知ってる？」
『！……もしかして』
手は止めずに、恵さんの方を見る。
「知ってるんだね。今 任務してる子達だよ」
『なっ…』
ジュー…、と。
油の音が大きくなっていく。
私は、火を止めた。
「…真夏は、基本的に味方に対して露骨な嫌悪感は表さない方なんだけど」
『重々承知してます』
「そんな真夏が唯一、露骨に嫌々オーラを放つ相手が 真紅リーダーの東堂和弥」
今日、休憩時間に夕日ちゃんが言っていた人だ。
夕日ちゃんや 春日くんを、半ば無理やりにこちらの道へ連れてきた人だという。
「気に食わない気持ちはわかるよ。…今こうして、他人を利用して真紅の実績を広げてるんだから」
パンを皿に盛り付けて、彼のテーブルに置く。
私は、何も言わずに彼を見つめる。
「…そんな捨てられた子犬みたいな顔されても。この子らの主は俺でも ましてや真夏でもないんだよ」
眉を下げて笑う惠さんを見て、私は俯く。
『…そんなの、ずるい』
数秒間の沈黙ののち、惠さんが口を開く。
「…まずい」
スマホで通話を開始する彼。
「春日？今どうなってる！？」
『…っ！』
スピーカーモードのそれからは、荒い息。
それは春日くんのものというよりも…。
『……夕日、ちゃん…？』
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
