欠陥品 ページ34
《試合終了_____！！》
15分を示すベルが鳴り、交戦中だったところ、ペイント弾が止んだ。
辺りの草木は赤と青が広がっている。
「ふぅ…お疲れ様ですっ、Aさん！」
『うん、お疲れ様。』
自分より数センチ背の高い先輩…双葉Aさんは、うんと伸びをしてからフィールド外へ歩き出す。
初見では、いかにも初心者な女の子…程度だった。
だけど、実戦経験があったからだろうか。
敵を前にした時の動きは迷いがない上に、多少の無理な体勢でもしっかりと敵の体へ的確に弾を当ててみせた。
「…すごくカッコ良かったですよ！！」
なんて、脈絡がなさすぎたかと言葉を補おうとしたけれど、彼女はニコリと笑って礼を言った。
「あの…Aさん。」
『えっと……なに？』
「紅苹＿＿…」
「ゆうひちゃーん！！！」
その声に反射的に反応し、レッグホルスターにあった銃を抜き出し近づいた男の眉間に銃口を寄せる。
「曲者！」
「…じゃなくてお兄ちゃん！」
唖然とする、とはまさにこのことだろうか。
彼女はポカンと口を開けて私たちを見つめている。
「…もう！大事な話をしてたのに！夕日は激おこですよ！」
「ごめんね ゆうひちゃん！でも可愛い！」
『……あ、ゆづ。この人たちは…』
知り合いを見つけたらしいAさんは、兄とともにやってきた男の方に駆け寄った。
どこかで見たことはある気がする。その程度の面識の方だった。
「…“かの有名な”轟兄妹。真紅のオールラウンダーとスナイパー」
そんな有名人に、こんな小さな女の子も含まれるのか。
そんな表情をした彼女に私は再び笑った。
「誇れるものではありませんよ。…夕日も春日も、真紅の下っ端でしかありませんもの」
…そう、私たちは。
生きる意味をお互いに分け合った。
生きるために、地獄を選んだ。
《次の試合を始めます。BチームとCチームは準備を始めてください》
「春日も、えっと…」
「…結弦」
「結弦さんも、行ってください！応援しております！」
深々とお辞儀をしてから、彼らがフィールドへ向かうのを見つめた。
『……下っ端って…やっぱり、人数が多いから？』
「気になさるんですね。それもありますが…夕日も春日も欠陥品なのですよ」
右手を見せた自分は、彼女のまずいことを聞いたという顔に苦笑をしてしまう。
そのままゆったりと右手を下ろした。
「何故でしょう。……貴方になら、話してもいい気がします」
＿＿＿…これが、夕日と彼女の出会い。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
