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8月2日(木)
あの事件の後。
透さんは少し経ってから目が覚め、私たちは全員揃ってお見舞いへ行った。
思っていたより元気そうで、それから、何よりも先に彼女は頭を下げた。
*****
“たくさん迷惑かけたし、巻き込んじゃってごめんなさい。だけど…私たちの復讐はたぶん、もう終わったのだと思う”
“…俺は、いつまでたっても透を最優先に考えてしまう。…でも、もうそれは止めようって思うから”
“…だから、これからも紅苹果でいさせてください”
私たちは、彼らの決意に触れた。
*****
「ほら起きなよ!今日アレでしょ!気合い入れて!ほら!!」
朝からテンションの高い真夏さん。
私もゆづも、揃って耳を塞いでいる。
アレ、というのは合同授業。
一昨日のHRでチーム分けをして、ゆづと私は別チームだった。
3チームに分かれて行われる合同授業の内容は、未だに明かされていない。
ともかく、私は菅乃くんと同じAチームで、ゆづは部長と同じBチームだった。
八戸さんはCチームで、ちょうどバラバラになったみたいだ。
「これ終わればやっと夏休み入るし、まぁ頑張んなよ!」
花菱学園は他の高校とは違って、教科が多いため学習時間も多くなってしまう。
だから春休みや冬休みは1週間程度で、夏休みは3週間程度。
学生にはあまり良い制度だとは思えないけど。
『……夏休みがもうすぐだってはしゃいだり、休みの期間が短くて残念がったりって、やっぱり普通のとこもあるんだなぁって思っちゃうね』
「俺は夏休みなんて無くていいと思うけどな。暑いからって動かなかったら体鈍るし、むしろ夏は絶好の訓練のチャンスだけど」
『…ブレないなぁ』
朝食を終え、玄関へ向かう。
惠さんは私たちが起きるより前に出かけたらしく、相変わらず透さんは病院だから今日は事務所には真夏さんだけだ。
後処理で有休を取ったらしい。
『真夏さん。何かあればお手伝いしますから、頼ってくださいね』
「超優しくなってるねー!………大丈夫。こっちだって子供じゃ無いから、なんか溜まったら吐き出すよ」
子供じゃ無い。それは、その表情が物語っていた。
私は切り替えて、立ち上がる。
『……行って来ます!』
「…うん、行ってらっしゃい!」
「…って、蜜ちゃん返事はー!?」
「うざ」
…本当に、いつも通りだなぁ。
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作者名:リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2018年7月15日 12時