やっと転入 ページ3
朝食後、すぐにゆづがやって来た。
透さんは下で掃除をしている頃だろう。
「はぁ…面倒くせぇ」
『月曜日だもんね…。』
やはり学校は学校。
コミュニケーションは求められるし、勉強はやはり学生の本分と言える。
面倒なのは今までの女子高生生活でよく理解していた。
「そういやお前、申請書はなんて書いたんだよ」
『ん、えっとね…』
本当に、見たこともない部活と授業だらけだった。
その中で、微かに夢見ていた職業と似たものを選んでみたのだ。
『部活は救護部、授業は対人格闘、射撃、近接戦』
「授業はともかく、お前部活…」
『え、おかしい？救護部』
表情が動かないから、彼が何を考えているのかも分からない。
けど声色で、何と無く察する。
「…まぁ、部活見学とか行けてないから分からなくもないけど…授業で選択すればよかっただろ」
『でもこれ、部員一人、だよね？ちょっと興味湧いてさ』
と、言うと、物好きだと言って終わった。
救護部の唯一の部員は部長の氷高雛子さん。三年生だ。
「あとで後悔しても知らねー」
『えっ？えっ？だから何…？』
＊
兎にも角にも、今日が転入当日ということになったので少し早めの登校だ。
ゆづは先に教室に行くそうだが。
「職員室は入って右の三番目だ。流石にわかるだろうけど、万が一 迷子になったら連絡しろ。」
万が一をすごく強く強調された。
絶対に迷うなと言う強い意思が伝わってくる。
『あ、ありがとね、ゆづ。それじゃあ後で』
「……」
あ、また不機嫌そうだ。
たぶん後でも話したくないんだろうなぁ。授業参観に親が来たら無視するタイプ。
『よし。入って右から三番……わっ！』
ドン、と、軽い衝撃。
そして、フワフワの髪が目の前を靡いた。
「しゅ…っ、す、すみません…！！」
明るい茶色の、艶やかな髪。
奥まで綺麗な桃色の瞳。
思わず、見惚れてしまう。
「あ、あの…？」
『あっ、こっちこそぶつかってごめんなさい！怪我とか無い？』
「ふふふ。平気です。優しい方ですね。けど……見ない顔な気がします」
『今日から転入で…』
説明すると、なるほど！と可愛い声をあげた。
それから彼女が口を開こうとしたところで、遠くから呼ぶような声。
「ゆうひーっ！」
「はわ…っ、すみません！私はこれで！」
『あ、うん。』
「轟夕日！以後お見知り置きを！」
スカートの端を摘み、お姫様のようなお辞儀をしてから声の元へ去っていく。
私の名前、言えなかったな。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
