雨の物語。3 ページ17
「初めまして、警視庁捜査一課理事官の＿＿」
「おい、そんなことより透は…、」
相手の胸ぐらを掴む。
その男はニコニコと笑顔を絶やさない。
「こんなこと言いたく無いんだけどね」
「…は？」
「今ね、決して面会が許可されてるわけじゃ無いんだよ。警察が彼女に事情聴取をする段階。さらに言えば君たちがした事がなんなのか我々には見当がついている。それはもうしちゃいけないことなんだよね。犯罪犯罪。それで僕の名前は…」
「そんなことどうでも良い！」
大声で叫んだ。
まだ部屋にすら入れてもらっていないのだ。
「名前聞いてくれたら入れてあげるよ。あと病院では静かにね」
「……」
「僕は警視庁捜査一課理事官 兼 正染関連管理局局長の小鳥遊伊月。」
「漢字が多い」
ははは、と笑って流される。
が、部屋の前を退いた瞬間、俺は部屋に駆け込んだ。
「……まだ、目は覚めてないのか」
「僕の予想だとあと五分くらいすれば覚めると思うんだよね。だから五分だけ君の時間をくれない？」
「…………分かった」
素直で良い子。と言った小鳥遊は椅子を二つ並べ片方に座る。
俺はその横に座った。
「さっき言った役職の後半覚えてる？」
「…清掃関連局長」
「それのスカウトしたいんだよ。」
「それなんだよ。警察か、清掃員か」
背中を向けた窓から日差しが差し込む。
雨は止み、今はもう日が沈みかけていた。
「正染っていう…もうすぐ出来る武装組織。」
「それに、入んのか」
「殺し屋さんのお手を借りたく。」
挑発的に言った。
怒鳴ればきっと、コイツはまたヘラヘラ笑うんだろうな。
「透に、怪我をさせたく無い」
小鳥遊はため息をついた。
「君がそんなに彼女を大切に思うなら……巻き込まなければ良いのでは？」
「巻き込まれに来るんだよ。そうじゃなきゃ、こんな……」
こんな、こと。
「話は早いね。君は彼女を傷つけたく無い。このままだと君も彼女も牢獄行きだよ」
「………これしか、無いって」
「そーいうこと。君の今までの殺しを正当化させる方法以外に君と透ちゃんを救う手はないよ」
俺のことなんてどうでも良い。
でも、コイツだけは…。
「…夏」
「とお、…る、」
「私は、夏が行く場所にいるよ。ねぇ夏。夏はいつから……笑わなくなったの？」
その言葉が胸をついた。
“笑わない”。
心の、底から。
「清掃員、やってやるよ」
こんな笑顔でも良いのかな、透。
真っ直ぐに、夕焼けを見つめた。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
