食べ盛り ページ2
7月23日(月)
ジリジリと、カーテンから日差しが差し込んだ。
目を細めて時計を確認すれば、スマホからタイミングよくアラームが鳴る。
5時30分。私はベッドからおり、制服に着替える。
…正直、緊張が8割だ。けどこのドキドキはそれだけじゃない。
残りの2割、楽しみだと思う自分もいた。
部活動と選択教科の書類を確認する。
選んだものは、全てかなり勇気を出して書いた。責任者印には透さんの印がしてあった。
『急がないと。今日は惠さん起こす番だし…。』
昨晩用意したカバンを共有ルームに持っていき、ソファに置いたら惠さんの部屋にノックして入る。
『起きてくださーい、惠さーん！』
…まぁ、起きるわけもなく。
そういえば、真夏さんは起こすのに色々工夫してたよなぁ。
スマホから大音量で演歌を流したり、古典的にフライパンをお玉で叩いたり。
透さんから聞いた話だが、盥落としをしようとした日には真夏さんは瀕死にまで追いやられたらしいが。
だけど寝起きが悪い人がされたくないことといえば、簡単に想像がつく。
彼の薄い掛け布団と枕を奪い取り、大声で叫ぶ。
『起きろ東大生ー！！！』
「うるせぇ！！」
…まぁ、そうなりますよね。
＊
「あれ、今日もりんご？」
『透さんが、実家からかなり送られたらしいですよ。旬ではないけど結構美味しいですし』
「新人ちゃんってりんご好きなの？」
『そうですね。実は好物だったりします』
と、言ってりんごを口に運ぶ。
シャリシャリと果物の食感がして、甘い香りが口の中に広がる。
「…幸せそうに食べるよねぇ」
『そうですかね？真夏さんも引けを取らないと思いますけど…』
「アレはムカつくだけ」
惠さんも、朝食をしっかり食べてくれるようになった。
とは言えまだ食が細いのも事実だが。
「はい、食べる？」
『え、良いんですか？』
「そのりんご、今日で最後でしょ？」
なんだか見抜かれていたみたいで少し悔しいが、お言葉に甘えて頂くことにする。
「餌付けしてるみたい」
『やっぱりご遠慮します』
惠さん、ゆづより年上なだけあってゆづよりドSかもしれない。
口元に軽く手を当てて馬鹿にするような笑顔の彼。
そしてその間にも、真夏さんは黙々とご飯を食べているのだ。
…食べ盛り、恐ろしや。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
