胸騒ぎ ページ23
彼女の手にある銃を払う。
油断からなのか、それは床へと放物線を描いて落ちた。
彼女が、左手の銃をこちらへ向けようとする。
私はいつの日か対人格闘で習った動きを思い出す。
『……油断の入った左手に手を伸ばし、』
それを強く払う。
銃を落とせはしないものの、隙はできる。
「…！」
そこで足に銃弾を一発。
「…っく、」
体勢が崩れたところで、相手の腹へ突進して、動きを封じる。
『…動かないで』
ゆづから貰った、痺れ薬の入った銃を彼女へ向ける。
撃てば一瞬で意識を失う。効果は大きく、一時間は保てるはずだ。
「…どうも、普通の女子高校生とは思えませんわ」
『私はもう、普通じゃない』
澄んだ瞳が私を見つめる。
その瞳はどこか愉しんでいるように思える。
「そう、ですわね。普通じゃない……とっても狂っています」
『……、』
動じてはいけない。
犯罪者の挑発に乗ってはいけない。
「正染も紅苹果も貴方も…狂っていますわ。信念を貫く我々に対し、人情を消して銃口を向ける。その先にいる者が家族でも、友人でも恋人でも」
『それでも私たちは、』
「正しいことなんてこの狂った世界には有って無いようなものですわ…。そんなものに執着して一体なんになると言うのです？貴方がたは可笑しい…！人を殺してのうのうと生きていられるのは何故です！？」
そんなこと。
それこそ綺麗事じゃ無いか。
お前らだって人を殺している。
私たちと同じように、のうのうと生きている。
「私は絶対に許しませんわ。あの男を……相生惠を許しません」
『……え、』
直後。
爆発音が耳に突き刺さるように響いた。
その衝撃と同時に、押さえつけていた彼女が姿を消した。
『……しまった、』
《…新人ちゃん》
『……っ！』
彼女の言った言葉が引っかかった。
惠さんを許さない。彼が大切な人を傷つけたということは真夏さんから聞いているけれど、もしかして彼女が＿＿＿＿…
《16階で透を回収してこっちが待機してる車に戻って。》
『……回収、って』
《瀬名にやられた。真夏が向かってる。とばっちり食うから急ぎな》
…たぶん、私たちの会話は聞いていなかった。
今は任務のことに集中しよう。
…透さんがやられたっていうのは、本当なのだろうか。
彼女の昔の話すら俄かには信じがたかった。
『…急ごう』
胸騒ぎがひどかった。
さっきの言葉が、ずっと頭に張り付いている。
彼女の憎むような瞳が、私にも向けられていたから。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
