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樹 ｢お、Aじゃん｣
｢樹、久しぶり｣
樹 ｢これから授業？｣
｢そう、芸術文化論｣
樹 ｢ああ、そういえばそんなの取ってたな｣
大学構内でたまたま遭遇した彼は、ついこの前染めたばかりの銀髪に伊達眼鏡というスタイル。
2連でフープピアスなんかしちゃって、見るからにチャラいけれど、それでもどこかに爽やかさを感じるから不思議だ。
樹とは小さい頃からの腐れ縁で、勉強が嫌いな彼とそこそこできる私とでは進学先違うだろうって受験の度に思ったのに、何だかんだ気づけば同じ学校で。
本人曰く持ち前の運とやらのお陰らしいけれど。
そんなこんなで出会ってから19年、私の楽しい思い出には大抵樹がいる。
まあ、それがもう当たり前になってるから何とも思わない。
履修登録が終わって、お互いに時間割を共有して、笑ったことをふと思い出した。
取る授業のジャンルが真逆過ぎて、本当によく幼馴染やってるなとつくづく思った。
“芸術文化論？ナニソレ”
なんて、4月に言われたのが懐かしい。
｢樹は？バイト？｣
樹 ｢いや、今日はバイト休み｣
｢だよねぇ、明らかにいつもより気合入ってるもんねぇ｣
樹 ｢バレた？｣
ニヤリ、という効果音が似合うの、この人だけなんじゃないかと思うくらい口角を上げてる樹を前に、溜息を吐く私。
｢どうせ、女の子でしょ？｣
樹 ｢そ、たのしんできまーす｣
｢ほどほどにね｣
樹 ｢はいはい｣
樹は見た目そのまんま、遊び人だ。
なのに彼女は作ったことがない。なんだか、そこまで気持ちが乗らないんだって。
最低だって最初の頃はなじったけど、樹の人生は樹の物だから。
私がそこまで口出すのもなんか違うなって思った時からもう咎めるのをやめた。
ヒラヒラと手を降って去っていく樹を尻目に、私は教室のドアを開けた。
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作者名：ゆる | 作成日時：2021年10月3日 21時
