Saotoubo. (ページ1)

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珍しい。
それが私がその人に抱いた第一印象だった。

家から歩いて数分の、地元に寄り添ったケーキ屋さん。

小さい頃から誕生日ケーキは決まってここで頼んでいる。

クマやウサギ、ヒヨコなどの顔をモチーフに、凄く可愛くお洒落にデコレーションされたホールケーキに、私の心は簡単に踊らされた。

そんなキラキラが詰まったここで、働くのが私の夢で。

大学一年生になった今、私はここでバイトしている。

少し仕事に慣れてきたかなと思い始めていた6月。

“今日からここでお世話になります。
よろしくお願い致します。”

新たに増えた仲間と初めて対面した。

お辞儀をした顔から、スっと通った綺麗な鼻が覗いている。

ショートカットの背が高い綺麗なお姉さんだな、仲良くなりたいな、なんて、そんなことを思いながら、艶のある黒髪がまた元の位置に戻るのを眺める。

考え事をしながらボーッと見つめていたせいか、ふと目が合ってしまって、軽く会釈した。

その人もそれに応えるように少し目を細める。

“そういえば名前、言ってないでしょ？”

｢あ、すみません。まつむらほくとです。｣

店長に促されて発されたその人の答えに、私は耳を疑った。

あれ、お姉さんじゃなくてお兄さん…？

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