思うほど、簡単じゃなくて―橙― (ページ4)

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偶然ページ4

「でもいーと思うよ。即戦力になるって思われたんだろうし、A、ほら見た目男の子だし」

『やっぱり女の人だと色々・・・あれなんですかね？』

「そうだね、でも急募してたからね。適材適所だったんだろうね」

『・・・なるほど』

２杯目はレモンサワーにした。

はじめてきたけど、落ち着いててお客さんとの間隔も広くて、すごくいいお店。
ケンさんおすすめのドテ煮、っていうのをあてにちびちび飲む。

「でもA、関ジャニって知ってるの？」

『・・・・・勉強します』

「だよね(笑)アメリカで青春過ごしたら・・・ね」

『今日色々資料もらったので、明後日までに覚えます』

「何回かお仕事で一緒したけど、うん。いい人達だったよ」

それを聞いてちょっと安心して、３杯目のレモンサワーを頼んだ。

「あれ？・・・・まるちゃん？」

ケンさんの声の方向を見ると、カランカラン、とドアベルがなって
ハットと丸眼鏡をした男性がお店に入ってきた。

ここからでも分かるぐらい顔が赤い。

丸「あれぇーーーーケンさんじゃないですかあぁ」

満面の笑みで、カウンターに座っていたケンさんの一つ横の席に座る。

ケ「(笑)まるちゃん、今日も酔ってる？」

丸「ふはっ・・酔うてへんですよぉ。たぶん」

真っ赤な顔でふにゃ、って笑ってウィスキーを頼んだ。
なんかこの人の周りだけぽわって、ぽわぁっていう空気に包まれてて
出会って数秒なのに目が離せなくなる。

丸「あ、はじめまして。まるやま、いいますぅ」

急にこっちを向いて手を差し伸べられたから、ビックリして
どうも、っていうだけで精一杯だった。
そんなまるやまさんに目を奪われてたら、ケンさんの携帯が鳴った。

ケ「やば・・・お客さんからだわ」

ケンさんは売れっ子のメイクさんだから、お客さんから昼夜問わず連絡が来る。

行かなきゃっ！A、どうするっ？て焦ってお会計してるケンさんに合わせて
慌しくあたしも一緒に店を出た。

まるやまさんは、バーのマスターと話してたけど
ペコって頭下げてくれていた。

ケ「A、あのね、今のまるちゃん・・・んー！ラインするわ！」

って早口でまくしたててケンさんはタクシーで消えていった。

－・・・どゆこと？－

それにしても、不思議な雰囲気の人だったな。

イケメンなんだけど、おにーちゃん達とも違う
なんか柔らかい空気に包まれた人だった。