102輪 ページ19
千空side
コハクの声に全員がバッと同じ方向を向く
『はぁ…はぁ……た、ただいま…』
そこにはクロムと同じルートで帰ってきたAの姿が
村の連中がクロムの時と同様、一気に歓声を挙げる
Aは急いで走ってきたのか息切れをしている
俯いて浅く呼吸をする口元を見ると何か赤い液体が着いていた…血？
「っなんだその血は…」
『はぁ…はっ……うﾞ、っゲホ…！！』
俺が近づくと両膝をつき、咳をしながら口を片手で覆った
その手からはボタボタと赤い液体が溢れ出ている
「それは病気の時の私と同じ…っ！」
「Aが肺炎になっちゃったんだよ…！！」
Aが吐血すると周りに人がわんさか集まってきた
ゲンがお優しく背中を摩ってやるなか、Aの顎を掴んで顔を上げさせると、苦しそうに目を細めて息をしていた
…この匂い
「クククっ…いつまでやってんだよ」
『……もうちょっと騙せると思ったんだけど』
いや充分肝冷えたわ
相変わらず演技上手すぎんだろ
急にケロッと立ち上がったAに村のヤツらが全員驚く
「結局それで騙したのか！」
『うん、意外と余裕だった』
呆然とする村のヤツらを置いてAがクロムにグッドサインを送るとクロムも同じポーズを返していた
なるほどな
「テメーの入れ知恵か
やるじゃねぇか！科学使いクロム…！！」
「おぅ、素材の調合だけはな
俺の科学は経験値だ…！！」
クロムと腕を突き合わせてからもう一度Aの方を向く
口にはまだあの赤い酸っぱい匂いが残っている
「何か知ってる匂いがするんだよ？」
「梅をシソで漬けたあの……」
『？せんく、……！？』
Aの唇に舌を滑らすと、3700年振りのあの懐かしい酸っぱさが口内に広がった
「ククク、冷静になれば梅干しだってソッコー分かるが…テメーの演技に相当ビビったんだろ」
＿＿＿＿何にしろ、
俺は顔を紅潮させるAを久々に抱きしめた
『千空…？』
ワタワタとするAに頬が情けなく緩む
暖かい体温に酷く安心する
優しい香りで肺が満たされる
「…ちーっと我慢しやがれ」
優しく頭に置かれた手の平が心地よすぎて首元に顔を埋める
暫くは離してやれねぇわ＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 834人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (6月15日 0時) (
レス) @page20 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ(プロフ) - 初めまして、読んでてすごく面白く楽しかったです。大変だと思いますが更新楽しみに待ってます！ (2022年9月18日 8時) (レス) id: d701dfc233 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - 面白い！続きが読みたくなる！ (2022年7月27日 11時) (レス) @page20 id: 7b62560270 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - お久しぶりです！更新ありがとうございます！ (2022年3月3日 1時) (レス) @page11 id: a2584f84ac (このIDを非表示/違反報告)
油揚げ(プロフ) - わあああああお久しぶりです！！！更新待ってました！！！！！！めちゃくちゃ楽しいです^_^これからも無理しないペースで頑張ってください，更新待ってます！ (2022年3月2日 20時) (レス) @page11 id: b66c454432 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翡翠
| 作成日時：2020年6月28日 0時
