3.捨てるもの、守るもの、そして走る者 ページ46
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.捨てるもの、守るもの、そして走る者
「…なんで自分、ここに居るん？」
「……あ、」
………顔を上げると、そこには、すばるくんが居た。
「男と出掛けるんとちゃうん」
「なんで、知ってるんですか」
「ヤスから聞いた」
「…なんでも…筒抜けやなあ」
「そんなことどーでもええねん。
何かあったん？振られたん？
それにしては時間早ない？」
「………あの、」
「何？」
「………怖なって、しまって」
「…はあ？」
「今日、3回目なんです、デートが。
3回目が勝負ってよく言うやないですか。
でも、全然、選ばれる自信なくて…。
それに私、やっぱりそんな
価値とか権利のない人間やから
今日クリスマスやのに
こんなに気合入れてお洒落して
章ちゃんに髪やってもらって
にやにや応援されて家出てきてんのに
もし、もし、私の思い違いで
また、いつものパターンやったら、
私、もう家に帰られへんし……」
溢れそうな涙を、必死に止めようとしてみる。
するとすばるくんは、いつもの真っ直ぐな目をした。
「なんや自分、アホちゃうか。
やから行く前に逃げてきたん？
3回目？そんなセオリーやら目論見通りに
全部、進むわけ無いやろ。
そんなデート神話なんか捨ててまえ。
あと、あんたがどうなろうと
あんたの家族は誰も
あんたを責めたりせえへんて。
逆に、慰めてもらえばええやん。
泣けばええやん。
それに、自分、ヤスの従兄妹なんやろ。
可愛ないわけないやろが。
権利でもなんでも、あるに決まってるわ」
どうすればいいかなあ、と半泣きで聞くと、
知らん、と踵を返された。
しかし背中越しに、すばるくんは
言葉を投げかけてきた。
「走ればええやん」
その瞬間、私は返事も返さずに駆け出した。
結局私は、いつだって自分が傷つくのが怖かった。
誰にも見捨てられたくなかった。
それが無理なら家族だけでも死守されたかった。
ずっと心に引っ掛かっていた。
あそこでの逃亡はずっと影を残していた。
でも、それでも、そうだとしても
私は走らなくちゃならないのだ。
今しかない。
七時に、本社近くの駅前の、
イルミネーションが巻き付いた並木通りの
そこに、あの、あの人が居るはず。
走っていかなくちゃ。走るしか出来ない。
もう居いひんかもしれへんけど、
来てもないかもしれへんけど
逃げちゃ駄目なんだ。
逃げないって、決めたんだ。
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ゆうみ(プロフ) - りずさん» ありがとうございます！私のイメージがかなりバレるお話かなあと思っています笑 (2019年9月29日 22時) (
レス) id: 23afaa0b1c (このIDを非表示/違反報告)
りず(プロフ) - この話好きです！！不器用で、でも一生懸命な丸ちゃんが可愛すぎて。ヒロインちゃんの背中を押してくれるすばるくんも、素敵。 (2019年9月29日 10時) (レス) id: 8a21356a9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2019年8月10日 9時
