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ep.5 ページ6
Sara side
「あ、たばこ吸うてる」
「…」
さっきまで私が座っていたソファに、いつの間にかアーセナルが座っていた。
そんなに長風呂やったかな、と髪を拭きながら考える。
絨毯の床に座り込んで、その顔や指を下から見上げた。
「一本ちょうだい」
「あかん」
「なんで」
「セーラはあかん」
「もう、昔っからあたしだけ、何でもあかんあかんって。
アーセナルいっつもそう。
あたしが仕事始める時もそうやったしさ」
「そんなんあれやろ……いや、ええわ」
「ええ、なに？気になるわあ」
「もう寝えや」
「まだ起きてられますー」
面倒くさそうに遠くを見るアーセナル。
私も煙草を吸えば、同じ場所が見えるんかな。
そう思って睨むと、下に降りてきた目線と目が合う。
「眠くない」
「……もう、今日やで」
「散歩しよ」
「嫌や」
「じゃあ煙草吸う」
「……」
「散歩」
「…」
アーセナルはため息を吐いて、煙草を灰皿に押し付けた。
勝った。
私はいそいそと上着を羽織った。
苦い顔のままアーセナルも立ち上がり、私を見た。
「何や帽子も被っとけ」
「はいはい了解」
私は無理に被せられた帽子を被り直して、けだるげなその背に続いた。
外には見慣れた夜が広がる。
私はこの人と一緒なら、この夜も銃弾も未来も、何にも怖くなかった。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年8月22日 11時
