ep.45 ページ46
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セーラがスーツを血に染めて帰ってきたあの朝。
俺は何も言わず、自分のベッドにセーラを寝かせて煙草を吸うた。
セーラは、痩せていた。
俺は何も大切に出来たことはない。
だからセーラが居なくなった時、思い出に縋った。
触れば血の出る、薔薇の思い出に。
だからこそ、セーラに触れるのが怖かった。
俺に資格はあるのか。
考えると解らなくなって、心臓の上に口づけた。
朝になって、セーラが俺の部屋から出てきた時、皆はその無言の意見表明を受け取ってくれた。
ジョニーは二人で帰ってきてくれてありがとうと、俺を見て泣いた。
……俺は再び、セーラと約束した。
セーラを殺すこと。
それは秋本Aを殺すことでもあったし、過去の全てのセーラを殺すことでもあった。
俺はこの子に名前を付けた。
俺にはこの子を殺す義務がある。
やから俺は、この子に俺の人生をやろう。
これしきの命や、幾らでもくれてやる。
殺したのなら、生き返らせる責任がある。
俺はそうしてAを殺して、セーラを取り戻した。
セーラが初めて俺の物になった。
それはつまり、俺の血の一滴までもセーラの物になったという意味やった。
セーラはよく笑う。
そして素直に人を愛する。
それはあの男に習ったことなんやろう。
サブマシンガンと共に今夜もセーラは街に繰り出す。
髪色も長さも昔の通り。
でも何もかもが違う。
月光の似合う笑顔と、陽光の似合う笑顔、同じ笑顔を持つ女になった。
ありがとうと言わせてほしい。
セーラであることを選んだ君に。
俺のセーラであることを、再び選択してくれた。
過去のすべてが今も俺達にのしかかる。
でも、もういい。
知っているのはサブマシンガンだけや。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年8月22日 11時
